エピローグ 数ヶ月後。 あずさは臨海副都心にあるマンションで暮らしている。 そこは1LDK家賃20万の高級物件だったが、風俗嬢やAV女優として身を粉にして稼いでいる今、支払いに支障はなかった。 もっとも、金銭管理とスケジュール調整は同居している伊三が行っており、あずさはただ言われるがままに働き、彼に尽くす毎日を 送っている。 そして、当のPiaキャロット中杉通り店であるが、1ヶ月前に閉店すると即解体され駐車場に変わっていた。 だが、店を崩壊させた男たちは誰一人としてお咎めを受けず、貯め込んだ金で新しい道を歩んでいる。 相馬は芸能プロダクションを設立し美奈を含む数人をAV女優として所属させていた。とは言ってもあずさと同様に彼女たちも風俗 嬢として働いており、その収入の大部分をレッスン料として事務所に貢いでいるようだ。 島野は再びヘルス「Piaキャロット」に戻ると今もあの店を続けている。その際、数人の女性を連れて行ったらしいが、それが誰 であるかは彼女にはわからない。 そして、長井は涼子と葵を連れ小料理屋をはじめたらしい。あまり繁盛はしていないようだが、その分2人を侍らせ王様気分に浸っ ているという話である。 彼らが我が世の春を謳歌していたのは、涼子が本部の帳簿上の不備やミス(意図的ではない)を洗い出したり、美奈やつかさが重職 に就いている者にハニートラップを仕掛けた賜であった。 そのせいでPiaキャロットは相馬たちを弾劾するどころか、会社の存続を優先するため、これまでの非道全てを黙認せざる得なか ったのだ。 まさに悪が勝利してしまったという顛末であろう。 「…………」 しかし、もはやあずさには関係のない話であった。 彼女は何も身に付けない姿でリビングに現れると、届いていたファックスを眺めながら席に腰掛ける。 座面に半径10センチほどの穴が開いている奇妙な椅子。 だが、あずさは特に気にする様子もなくテーブルの上に置かれている呼び鈴を鳴らし、再び用紙に目を通していた。 紙には週明けからはじまる彼女にとって10本目となるAV撮影についてのスケジュールが記されている。 もっとも、内容についての記述は殆どなく、撮影前後の期間にどの男優やスタッフの性欲処理を行わなければならないのかという部 分に紙面が割かれていた。 毎回のように繰り返されるスキンシップであったが、以前に比べ多少志望者が減ったとはいえ、無償な上にどんな要求にも応じると いう都合の良さに予定は隙間もないほどに埋まっている。 特に最近は趣向を凝らしたシチュエーションを求められる事が多く、先日は鼻輪を装着させられた上、四つ這いで移動する事を命じ られ、性欲処理用家畜として1日を過ごした事もあった。 また、相手の妹役となって朝から晩まであずさの方からエッチな行為を求め続けされられるなど、それらの行為を撮影した映像を集 めて販売しようという話が持ち上がるほどである。 もちろん、彼女がそれらの要求を拒む事はなく、最初は乗り気ではないとしても最後には嬉々として男の期待に応えていた。 狂っているとは自分でも思ったが、もはやありきたりな行為では満足出来なくなっているのだ。エスカレートした先に待っているの は破滅という2文字であろうが、それがわかっていても目先の快感に靡いてしまうのである。 そんな中、呼び鈴に応えるように耕治が姿を見せた。 彼は股間の部分に穴が開いたゴム製の黒いブリーフと、その上に金属の器具を装着した出で立ちで、床を這いつくばりながらこちら の方へと向かってくる。 器具とはいわゆる貞操帯の事であり、肉棒を覆っている鳥籠状の檻の下では、皮を被った短小包茎が限界まで勃起していた。 もちろん彼にとっては精一杯のパフォーマンスなのだが、これ以上大きくなりようがないにも関わらず長さは子供のものと大差なく、 自他共に認める肉便器である男に相応しいサイズと言えよう。 「はぁ、はぁ……」 耕治は自らの役目を忠実に担うように、裸のあずさには目もくれず椅子の下に潜り込んだ。 「……じゅる、ちゅぷ」 そして、座面に空いた穴から床に垂れ落ちた汁を丹念に舐め取っていくのである。 しかも彼はその皮の被った肉棒を震わせると、無意識のうちに腰を動かしていた。 ――カチャッ 貞操帯が邪魔をし、肉に刺激が加わる事はなかったが、それでも自慰を欲する耕治。 その理由があずさの膣を満たした精液に対する嫉妬心である事を彼女は知っていた。 ゆえに出先で男と交わり子種を注がれても、それを洗い流す事なく持ち帰る事が日課になっている。 彼との関係を主従で終わらせないために。 「……ねぇ、便丸?」 あずさは耕治の今の名を呼んだ。 「ひぁ……も、申し訳ありません……申し訳ありません……」 すると、彼は怯えながら土下座の体勢を作る。 身体を丸め、しきりに床に擦りつけられる頭。恐らく勃起している事を咎められるとでも思ったのであろう。 もっとも、あずさはこれまで一度たりとも耕治を叱った事はなく、そのリアクションは彼が肉奴隷に変化する過程で擦り込まれた古 傷に他ならない。 「あら、やだ……怒ってるんじゃなのよ?」 「…………」 「便丸は……今の生活、どう思ってるのかなって」 「……お、お許し下さいぃ……あ、あずさ様に捨てられては……ぼ、僕は……い、生きて……いけ――ません。どうか……お、許し下 さいぃぃ……」 たどたどしい口調で再び耕治は頭を擦りつけはじめる。 「…………」 それは紛れもない本心なのだろう。あずさは今も彼の身体に残る折檻の痕を見ながらそう思った。 耕治はここに来るまで想像を絶するような地獄を経験してきたのだ。 かつての色を全て失ってしまうほどの。 「落ち着いて……あなたを捨てる事なんて、絶対にないから」 「…………」 「私……、前田君には感謝してるの。これまでも、これからも」 あえて、彼の本当の名前を口にするあずさ。 「……うぅ、あずさ様……も、もったいないお言葉……うぅ」 「だから……、今――私に出来る事はないかな?」 「そ、その……お言葉だけで……十分です……、そ、それより……お掃除の続きを……」 それでも耕治は一度も顔を上げる事はなかった。奴隷は許可なく主人を見てはいけないのである。 「じゃあ……これ」 あずさは少しだけ顔を俯かせると、テーブルに置いてあった貞操帯の鍵を床に落とした。 「……え?」 「外したら掃除の続きをしてもいいわ。ただし、顔をこっちに向けて、ね」 「……は、はい」 すぐに鍵を拾った彼は、器具を固定している南京錠に手を伸ばす。 しかし、なかなか鍵を外す事は出来ない。 体勢が悪いせいもあったが、明らかに要領の悪そうな動き。これも調教の結果であろう。 「……ひふっ、ふぅっ……」 ときおり漏れる怯えたような吐息。 主人の機嫌を損ねる事を恐れているのは明白だった。 「…………」 だが、あずさは何も言わない。 ただじっと、耕治が鍵を開けるのを待つのである。 「……はぁ……はぁ」 そんな中、彼はようやく貞操帯を外すと仰向けになり椅子の下に潜り込む。そして、犬が腹を見せるような格好であずさの秘部を見 上げるのだ。 「……じゅる」 そこへ濁った汁が糸を引くように垂れ落ちるのがわかった。 「……じゅるる、ちゃぷ……ごくっ」 何の躊躇も無く汚汁を溜め嚥下する耕治。 陰毛の中から辛うじて顔を見せている肉棒はその動きに合わせ微かに震えると、今にも射精してしまいそうな気配を醸し出している。 事実、皮を被った巾着の先端は見てわかるほどに湿っており、おぞましい奉仕に否応なく反応していた。 例え心が拒んでも、身体がそれを許さないかのように。 それはかつてのあずさと同じだった。 ――前田君……。 あずさは座面にある穴を軸にしながら向きを変え耕治を跨ぐ。すると、その拍子に膣内からは大量の精液が逆流をはじめる。 誰のものかもわからない大量の汚液。 「……ちゅる……くちゅ」 それでも耕治は穴に徹し続けていた。 更に激しく肉棒を勃起させながら。 「…………」 あずさは不意に立ち上がると、そのまま椅子を退かした。 そして、耕治の上に身体を被せ、その股間に顔を埋めるのだ。 「……ひふぅ、じゅる……!??」 「そのまま掃除を続けるの」 「……はひぃ」 彼女は彼にそう言い聞かせると、しっかりと皮を被った先端に舌を伸ばす。 鼻を突く悪臭。 定期的に風呂に入らせてはいたものの、常に分泌させる先走り液が皮の中に溜まっている状態では無理もない話であろう。その上、 他の主人に貸し出されれば小便に塗れて帰ってくる事も珍しくなった。 「……ちゅぷ」 もっとも、例えどんなにおぞましい肉棒であろうとも、あずさには関係のない話である。 彼女は唇を巾着に被せると、先端を舌で舐った。 いきり立っている割には冷たい皮と隙間から溢れる生温かい汁。内側には熱い亀頭の存在が感じられ、その温もりを求めるようにあ ずさは包皮の中に舌を挿し入れる。 ――前田君のおチンポ……あったかい……。 魘されたように愛撫を続ける少女。 「……うぅ、あずさ様ぁ……ちゅぷ」 耕治もしきりに秘部へ舌を這わせながら、我慢出来ない様子で掠れた声を漏らしていた。 「あぁん、出してもいいよぉ。我慢しちゃだめぇ……ちゅぽぉ、くちゅ」 あずさは射精の気配を察すると、今度は肉棒を根元まで咥え込んだ。 その上で、先端に舌を絡ませ皮に力をかける。 少しでも先端を露出させようという無意識の動き。 「……うぅ、も、もう……」 「……ふぁぶっ」 その刹那、大量の精液があずさの口内に噴き上がった。 とは言っても、パイプカットを施しているため精子は含まれていない。 だが、通常時と何ら変わらぬ粘度の汁が次々と肉棒から溢れていくのだ。 「じゅるる、くちゅ……ごくっ」 あずさはそれを吸い上げると、喉に集め嚥下を繰り返した。 「……あぁ、申し訳ありません……、こんな……汚いものを……も、申し訳ありません……うぅ」 耕治から怯えたような声が漏れていたが、意に介する事はない。 そればかりか、これまで幾度となく飲み干した精液の中でもっとも意味があるものだと思っていた。 「ちゅぷ、まだイけるよね?」 「…………」 「うふっ、遠慮なんていらないんだから」 あずさは精を放ち、すっかり衰えてしまった肉棒に乳房を重ねる。 男根は完全に肉の膨らみに埋没していたが、それでも構わず包み込んだ。 重そうに動きながら、クチャクチャといやらしい音を奏でる乳房。 そんな卑猥な愛撫の中、汗と溢れた粘液に塗れた肉棒は次第に固さを取り戻していった。 ――でも、これが私に出来る精一杯……。 「……ゴメンね、前田君……、こんな事しか出来なくて」 あずさはかつて普通に耕治と接していた時のように声をかける。 「…………」 だが、彼は何も答えない。 それでも肉棒は更に熱くなり、涎のように巾着から汁を垂れ流す。 あずさはそんな男根を乳房の形が変わるほどに締め付け、膨らみを上下に揺らしながら捏ね続ける。 少しでも早く気持ち良くなって欲しいと願いながら。 「……うぅ」 そんな中、再び彼は果てた。 押し出されるように零れる精液。 しかし、それは地表に届く事なく胸の谷間に広がっていた。 「うふっ、2回目にしてはいっぱい出たじゃない。オマンコの掃除が終わったら足の方も頼むわね」 あずさはその温もりを感じながら、再び主人の顔を見せる。それも全て2人の関係を円滑に機能させるためであった。 納得している訳ではない。だが、納得するしかないのだ。 「あん……いいわ、もっと奧まで舐めるの……」 こうして、朝のマンションの一室にはいつまでも彼女の声が響いていた。 いつもと何も変わる事なく。 おわり
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