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■Decrescendo Sample■

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だが、美汐には泣いている時間すら与えられはしなかった。

美汐の頭の上では、名雪が嬉しそうな顔で声を上げる。

名雪「ねぇ、祐一?わたし、美汐ちゃんとお買い物行ってもいい?」

祐一「おう、行って来いよ」

名雪「うん。そうするよ〜」

そして、話が纏まると、名雪は美汐の手を引いた。

美汐「…ぅ…?」

名雪「美汐ちゃん、お買い物だよ。お買い物」

美汐「…………」

美汐は強引に立たされると、全裸のまま名雪の部屋に連れ込まれる。

そして、名雪は美汐に自分の私服を渡した。

名雪「さぁさぁ、これ着て」

美汐「……は、はぃ…」

美汐は名雪に圧倒されながら、受け取った黒いトレーナーと薄いピンクのスカートを
纏っていく。

だが、全てを着終えた時、美汐は重大な事に気がついた。

そう、美汐は下着を身に着けていなかったのだ。

冷やりとした下腹部の感覚と、乳房に当たるトレーナに激しく違和感を覚える。

美汐「…あ…あの…、下着は…ないのでしょうか…?」

美汐は恐る恐る口を開いた。

もしかしたら、名雪は忘れているのかも知れないと思ったからだった。

名雪「ないよ?」

だが、名雪からは非情な答えが返ってくる。

名雪「だって、その方がお買い物してても楽しいと思うよ?」

美汐「…そんな…」

名雪「さっ、行こうね〜」

名雪は美汐の素振りを気にも留めず、再び美汐の手を引くと玄関へ向かった。

階段を下りる美汐は、まるで堕落するような気分に曝された。

そして、二人は外へ出る。

ひんやりとした空気と、外の眩しい光が飛び込んで来た。

美汐は複雑な顔を浮かべながら、名雪の後につづく。

名雪「あぁ、いい天気だねぇ」

美汐「…………」

外は見事なほどの快晴だった。

しかし、美汐の心はその空とは相反するものでしかない。

そして、二人は商店街の方へ向けて歩きはじめる。

いや、名雪だけしかその意思を持っていなかった。

美汐はただ後に続くだけである。

風が吹いていた。

穏やかで心地のよい。

美汐「…………」

美汐は自らのスカートの中だけを気にしていた。

何も穿いていない違和感。

その感覚は歩くたびに、彼女を苛んだ。

しかし、立ち止まる事は許されない。

名雪「さて、何処へ行こうか?」

いつしか二人は商店街に差し掛かっていた。

そこには、いつものように大勢の人々が行き交っている。

それぞれがそれぞれの意思で歩いていた。

美汐は寂しさすら覚える。

名雪「美汐ちゃん?元気ないね」

美汐「………いえ…」

だが、そんな美汐に名雪は笑顔で言葉をかける。

まるで美汐に辱めを与えていることを忘れているように。

美汐はそれが更に苦しかった。

そして、二人は当ても無く商店街を歩きつづけた。

美汐はいつしか頬を赤めている。

すれ違う人々の視線が気になりはじめたのだ。

もちろん、自らのスカートの中身を見られている訳でもなかったし、はたまた透けている
訳でもなかった。

だが、今の美汐には、それを確信する自信が持てない。

そして、恥ずかしそうにスカートの前で手を組みながら、名雪の後につづいた。

それこそ人の目を惹く格好だという事に気付く余裕もなく。

その時、名雪の足が止まる。

名雪「あ、新しい店だ。入ってみようよ」

名雪は洋服店の真新しい看板を指差し、美汐の手を引く。

そして、混雑する洋服店に入って行った。

中には流行りもののセーターから奇抜なジャケットやスカートなど、美汐にはあまり興味がなかった
ものが所狭しと置かれている。

名雪「美汐ちゃんに似合う服を選んであげるね」

そして、名雪は美汐の手を引きながら、店の中をぐるぐると歩きはじめた。

美汐は何も答えられず、名雪に引かれたまま後につづく。

名雪「これなんかどうかな?」

やがて、名雪は赤い生地のミニスカートを手に取ると、美汐の前に掲げた。

今、美汐が穿いているスカートより、数段短いものだった。

美汐「……え……?」

美汐は困惑する。

これでは、自らの恥ずかしい部分が露出してしまう。

そんな恐怖に苛まれた。

美汐「…み、短すぎます……」

そして、美汐は少し俯くと、それを拒んだ。

名雪「大丈夫だよ〜、気にしない気にしない」

だが、名雪は美汐の言葉に聞く耳を持つことはなかった。

まさに、美汐には拒む事の出来ない選択だったのだ。

美汐「………ぅぅ…」

名雪「元気だしてぇ、さっ、試着、試着」

有無を言わせず、名雪は美汐を試着台まで引っ張っていく。

そして、その中に美汐を押し込めると、値札のついたスカートを彼女に突きつけた。

名雪「さっ、さっ、脱いで脱いで」

名雪は目を輝かせ、美汐を見ている。

美汐「…………」

美汐は無言で頷くと、その赤いスカートを受け取った。

そして、覚悟を決めると、試着台のカーテンに手をかける。

名雪「あ、ここ開けたままでいいよ」

美汐「…うそっ…」

名雪「嘘ついてもしょうがないよ〜。大丈夫、見られないから」

名雪は当然といった顔で美汐を見ていた。

だが、美汐は困惑せずにはいられない。

今、この瞬間も名雪の背後には大勢の女性たちが行き来していたからである。

美汐は鏡に凭れ、体を丸めた。

美汐「…お願いします…、これじゃ…着替えられません…」

そして、涙声で首を振る。

しかし、その行為は無意味だった。

名雪「う〜。わたしが大丈夫って言うんだから、大丈夫なんだよ〜」

名雪は急に不機嫌そうな顔をして、美汐に食い下がる。

美汐は咄嗟に危機感を感じた。

自らが更に拒めば、名雪はもっと酷い要求をしてくる。

そんな気がした。

美汐「…………わかりました…」

美汐はそんな恐怖を感じながら、なむなく折れる。

そして、なるべく名雪の体に隠れるように腰をかがめると、穿いていたスカートを下ろしはじめた。
手は無意識に震えている。

それでも美汐は、時折り名雪の後ろを気にしながら、スカートを足首まで下ろした。

美汐の股間が露になる。

名雪「いい格好だねぇ」

だが、名雪はまるで他人事のように美汐の惨めな格好を見ていた。

美汐はそんな視線に耐え切れず、すぐに赤いスカートを穿きはじめる。

心臓が止まる思いだった。

そして、真新しいスカートを身に着ける。

名雪「うん。似合うよ、似合う」

それを見て、名雪は納得したように何度も頷いた。

確かに、自分でも服装のバランスには違和感は感じない。

だが、美汐は素直に喜ぶことは出来なかった。

名雪「じゃあ、買ってくるね」

そして、名雪はそう言うと、店員を呼ぶ。

すぐに二人の前には若い店員がやって来た。

名雪「これ買いますね、そのまま穿いて帰ります〜」

店員「はい、ありがとうございました」

美汐の目の前で料金の精算が行われる。

美汐はそれをただ見ていた。

短いスカートで外に出ることに怯えながら。

名雪「さて、次は何処へ行こうか〜?」

外に出ると、空の色は少しだけ青から赤へと、その面持ちを変えていた。

日が沈むまではまだ時間があるだろうが、何処となく寂しい雰囲気を感じる。

そして、再び二人は歩き出した。

 


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