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■mission■

 

 

 



             

第9話「侵蝕(7)」






「いらっしゃいませ、Pia☆キャロットへようこそ」

 気持ちのいい秋晴れの午前。

 今日も何事もなかったように、「Pia☆キャロット2号店」は開店の時間を迎えた。

 活気に溢れているスタッフたち。

 そんな中、あずさは一人気だるそうにぎこちない笑顔を浮かべている。

「………うぅ…」

 今も彼女の下半身には、ねっとりとした微震が走っていた。

 秘部と肛門を貫く異物。

 仕事に入ってからの数時間、あずさはその衝撃に苛まれている。

 そして、我慢出来ずに何度も気をやっていた。

 更には、夜が明けるまで少年たちに抱かれていた疲労が同時に彼女を蝕む。

 感覚がなくなるほど秘部を抉られ、肛門を貫かれた。

 したたる汗や、男たちの汚い精液。

 シャワーを浴びても、その感覚はしっかりと彼女に付き纏っていた。

「い、いらっしゃいませ…」

 だが、だからと言って目の前の仕事を放棄出来るはずもない。

 あずさは重い体を引きずりながら、目の前のテーブルに座った客の元へ向かう。

 客は、スーツ姿の男女で、商談がてらにこの店に立ち寄ったような雰囲気だった。

「ご…ご注文は何になさいますか?」

 彼女は今にも上ずりそうな声を抑えながら、オーダーを取る為にハンディという
機械を取り出す。

「コーヒーとロイヤルミルクティーで」

「は、はい。かしこまりました…。注文を繰り返します……コーヒーとロイヤル
ミルクティーで宜しいですね?」

 あずさはオーダーに合わせ機械を叩くと、最後にもう一つ別のボタンを押して
送信した。

 そして、ゆっくりとテーブルから離れると厨房の方へ向かう。

 中には数人のスタッフがおり、長井が次々と送られてくるオーダーをこなして
いた。

 そんな中、入り口から顔を覗かせたあずさと目が合う。

 すると、彼は彼女の顔を見るなり、今届いた伝票に手を伸ばした。

 そして、調理を一段落つけると早足で裏手の方へ足を向ける。

「塩足らんかったから、ちっと取ってくるわ」

 洗い場のスタッフに長井はそう声をかけていた。

「………………」

 あずさもそれを見計らうように、一旦店に出ると従業員用の通路を通って
裏手に向かう。

「へへ、早速来るとはな」

 裏の倉庫の前では、長井がいやらしい顔つきで彼女を待っていた。

 そう、あずさがオーダーの時に押したボタンは、彼女自身が綺麗、可愛いと
思った女性が来た時に押すという、長井が考えた余興の一環だったのだ。

「オーダーはロイヤルミルクティーか…、丁度いいな」

 彼は不気味に笑うと、そのままズボンのチャックを下ろす。

「それじゃあ、やってもらうか」

「……ぅぅ…」

 そして、その時にあずさもその意図をはっきりと理解した。

…この人たちは…私に関った全ての女の人を辱めるつもりなの…

 そんな思いを浮かべながらも、あずさは止む無く彼の前に膝を下ろす。

「…ひぐぅ…」

 その反動で、秘部に食い込んだバイブレーターが彼女の芯を刺激した。

 それと同時に、更なる刺激を欲する欲望が彼女を包む。

 だが、あずさはそれを必死に打ち消すと、おずおずと長井の男根に手を
伸ばした。

 黒々とした巨根に白い指が触れる。

 しかも、それはほのかに熱を放っており、彼女の指から体へと伝わっていた。

「………………」

 気持ち悪さに苛まれながらも、あずさはゆっくりと男根に口をつける。

…ちゅぷ…

 すぐにおぞましい味が口いっぱいに広がった。

 だが、あずさは必死に男根への奉仕を続ける。

「へへ、その調子だ、早くイカせねぇとばれちまうからな」

 長井は腰を突き出した格好で、彼女の頭を撫でながら口の感度を楽しんでいた。

 だが、その言葉はあずさの恐怖感を掻き立てる。

…早く…終わらせないと…

 そして、屈辱を浮かべる暇もなく、しきりに男根を舐めつづける。

 既にあずさの口は唾液と男根から染み出した粘液でいっぱいだった。

…くちゃ…ちゅぽ…

 それに合わせ、しゃぶる音も卑猥なものになっていく。

…なんて音…出してるの…

 秘部を焦がす異物と、自らの奏でる低俗なメロディ。

 あずさはおかしくなってしまいそうだった。

 だが、不意に口の中にねっとりと熱い液体が広がる。

「おっと…出ちまったぜ。ホント上手くなったな」

 視線の先には、半ば呆れた顔の長井がいた。

 そして、腰を揺すると奥に溜まった精液をも流し込んでいく。

「飲むんじゃねぇぞ?」

「ふぇ…?」

「そのまま、口の中に溜めてるんだ」

 長井はあずさの口から男根を引き抜くと、そう言いながらチャックを上げた。

 あずさは溜めた口を震わせながら彼を見ていた。

 嫌が上でも精液の味がいつまでも広がっている。

…飲み込んでしまいたい…

 彼女は不本意ながらもそう思った。

 だが、当の長井はそのまま倉庫内に入っていく。

 あずさは一人その部屋の前で立ち尽くしたまま、おぞましい味覚に苛まれていた。

「さて、戻るか」

 長井は塩の袋を抱え倉庫から出てくると、彼女に言葉を投げかけ歩きはじめる。

「ふぐぅ…!?」

 あずさは驚きの顔を浮かべた。

 そして、溜まった精液と唾液で口を膨らませながら、彼の背中に声をかける。

「おっと、そうだったな」

 すると、長井はわざとらしく言うと、ポケットから小さなガラスのビンを
取り出すと、あずさに差し出した。 

「この中に全部入れるんだ。間違っても零すなよ?」

「ふぁい…」

 長井の声に怯えながら、彼女はそのビンに向かい口を開く。

 どろりとヘドロのように精液がビンに流れ込む。

 そして、それを覆うように、あずさの唾液も泡を立てながら流れていった。

 すぐにビンは妖しい粘液でいっぱいになる。

「よし、じゃあさっさとホールに戻れよ」

 長井はあずさの尻を叩いた。

「…ひぃ!…あぁ…」

 だが、その瞬間、微痛のようにあずさを襲っていた感覚が一気に駆け上がる。

 そして、それは彼女に絶頂をもたらした。

 ようやく迎えたゴールに、体は歓喜のように震えている。

 あずさは複雑な思いで、顔を歪めた。

「けけ、イッちまったか。ちゃんとバイブはローテしとくんだぞ?」

 長井は蔑みの笑いを浮かべながら、厨房へ戻っていく。

 彼女は泣きそうな顔で、その姿を見送るしかなかった。




 あずさが店内に戻ったのは、それから数分後の事だった。

 バイブレーターはそれぞれ別の穴に移動し、再びあずさを悩ませている。

 もちろん彼女自身の手によって。

 入れてるフリをする手もあった。

 が、今のあずさにはそれは出来ない。

 だが、それは見つかる事を恐れている訳でも、美奈に危害が及ぶ事を避けようと
している訳でもない。

 ただ、無意識にそうしていたのだ。

 まるで体がそれを望んでいるかのように。

「あっ、あずさちゃん」

 しかし、そんなあずさを不意に現実が襲った。

「え?あっ…つ、つかささん…?」

「何処行ってたの?葵ちゃん…カンカンだったよ」

 同僚で今日は盛り付けを担当していた榎本つかさがのんびりとした口調で
あずさに声をかける。

 だが、表情は決していつもの彼女ではなかった。

 それもその筈、店内はいつしか大勢の客で溢れ返っていたからである。

 そして、それに対応するため皆瀬葵や神楽坂潤と言った同僚が息つく暇もなく
動き回っている。

 あずさは、それがどういう事か痛いほどわかった。

「ご、ごめんなさい…」

 あずさはただそう言うと、出来上がっていたメニューを持ち上げる。

 しかし、休むことなく体を突き上げているバイブレーターに、その手はどことなく
震えていた。

…カタ…カタ…

 まるで初心者のようにトレイが音を立てている。

 そして、それはあずさがオーダーを受けた男女のメニューだった。

 あずさの目が無意識にロイヤルミルクティーのカップに注がれる。

…ここに…

 彼女の頭に最悪の光景が過ぎった。

 あずさは震える手を抑えながら、その想像を押し殺す。

「…お待たせいたしました…」

 そして、静かにテーブルへとメニューを運んだ。

「ありがとう」

 若く清楚な風貌の女性が、そのメニューを手元に引き寄せる。

…ごめん…なさい…

 あずさは今にも泣きそうな顔で、その光景を眺めていた。

 その中に何が入っているのかを言えないままに。



…カラン…

 その後、すぐにあずさは店内で絶頂を迎えた。

 テーブルから引き揚げてきた食器の山からスプーンが床に零れ落ちる。
 
…うぅ…交換…しなきゃ…

 あずさは辛うじて厨房まで、それを運び終えると、無意識に呟いた。

 しかし、先ほどのつかさの言葉もあり、とてもトイレまで行く時間はない。

 彼女は困りながら、まるで這うようにして落としたスプーンを拾った。

 その時、店内の一角が目に付く。

 そこはオブジェとして備え付けられている植え込みだった。

 その裏には人が一人入れるほどのスペースがある。

「………………」

 あずさは、まるで呼び寄せられるようにその場所へ向かうと、そっと植え込みの
影に隠れた。

 そして、その場でバイブレーターを抜く。

 ねっとりと糸を引きながら極太のバイブレーターが床に転がった。

 そして、肛門から引き抜いた別の極棒を秘部に捻じ込む。

…じゅぷ…

 秘部は何の抵抗もなく、それを根元まで受け容れた。

「…………くっ…」

 同時に、激しい目眩が彼女を襲う。

 そのまま、バイブレーターを動かしたくなる衝動にまで駆られた。

 だが、あずさは必死に堪えると、前回自らを絶頂に導いたバイブレーターを
肛門に突き挿す。

「………………」

 彼女は何度も植え込みを見上げた。

 この瞬間、誰かがこの脇を通った時点で、あずさは破滅なのだ。

 追い詰められた感覚が、その動きに一層熱を持たせる。

 しかし、幸いにも誰にも気づかれることなく、彼女はその場所を後にした。

 もうこの場所に隠れたくないと思いながら。




 時計は11時を回っていた。

 ようやく、店内は落ち着きを取り戻している。

 だが、すぐに昼のピークが訪れるため、嵐の前の静けさに過ぎなかった。

 しかし、それでも動かない分、あずさにとっては救われる時間だった。

 彼女が来るまでは。

「あずさ…」

「えっ?…きゃっ…!?」

 あずさは不意に店内の死角に引きずり込まれる。

 そして、その先にいたのは葵だった。

「…あ、葵さん…」

「葵さんじゃないよ…、全く何考えてるのさ?」

「な、何って…?」

「あずさ…お前、いい加減にしろよ?昨日から居なくなってばっかりじゃないか?」

「…うぅ…」

 葵は心底怒った顔で、あずさを胸倉を掴むと厳しい口調で叱責する。

 だが、あずさは何も言えなかった。

「しかも、ノーブラってどういう事だよ?」

「…そ、それは…」

「まぁ、あずさの趣味をとやかく言う気はないし、そこらへんは店長か涼子の役目
だろうからこれ以上は突っ込まないけど、ホールの仕事に関してはアタシたちに
これ以上迷惑かけたら…タダじゃおかないからね!覚えときなさい!」

 彼女の手に更に力が篭る。

 あずさは、瞳に涙を浮かべながらそれを受止めていた。

 しかし、皮肉にも、葵の迫力に下半身を苛む感覚が限界寸前まで達している。

「…ごめん…なさい…」

 あずさがそう言うと、葵はようやく彼女から離れた。

 そして、暫くの間、あずさはその場に立ち尽くす。

 股間の火照りが治まるまで。








 それからも、あずさにとって散々な時間が続いた。

 昼は女子トイレの個室で休憩時間いっぱいを使い、相馬たちに奉仕を繰り返す。

 狭い個室で三人に囲まれるように、あずさは秘部と尻を捧げ続けた。

 しかも、たまに他の女性たちが入ってくるため、声を上げることもままならない。

 それが、彼女に再び奇妙な切迫感を植え付けていった。

 だが、それが何であるか、今のあずさには知りうる由もない。

 午後の仕事も、やはり午前と同じだった。

 しかも、夕方のピークでは、愛沢ともみや神塚ユキと言った高校生の同僚たちに
まで訝しがられながら、彼女は店内を動き回る。

 もちろん、その間、何度も絶頂を迎えた。

 その度に彼女は午前に使った植え込みの影に隠れるのだ。

 店内は大勢の客で賑わっていた為、なかなかタイミングがなかったが、それでも
あずさは命令を忠実に守った。

 それは決して本意ではなかったが、ただ盲目に隷従している。

 その頃になると植え込みの影の床はすっかり湿っており、独特の匂いが漂って
いた。

…うぅ…くさい…

 あずさは自らの体液の匂いに顔を歪めながらも、ぎこちなくバイブレーターを
入れ替えていく。

 そんな事を繰り返しているうちに、ようやく彼女の地獄の勤務が終わった。

 


「………………」

 あずさは一人、遊歩道を歩いている。

 一段と冷たくなっていく北風が容赦なく吹き抜けたが、未だ火照っている体には
丁度良かった。

 彼女は、ゆっくりと前を見る。

 寮はすぐそこだった。

 だが、なかなかそこに向かう気にはなれない。

 体は限界まで疲れきっている。

 だが、戻ったとしても、あずさに安息の時間はないのだ。

 しかし、それでも戻らなければいけない。

 相反する意識が彼女の中で渦巻いた。

「日野森?」

 だが、その時、聞き覚えのある声が背後から聞こえてくる。

 耕治だった。

「…ま、前田くん…」

 あずさは力なく呟く。

「どうした?やけに疲れた顔してるな」

「…ちょっと…ね」

「ちょっとじゃないだろ?こんな寒い場所に居たら風邪引いちまうぞ?早く帰って
寝ろ」

 言い方こそぶっきらぼうだったが、耕治らしい労わりの言葉だった。

 あずさにも、その気持ちは伝わったが、伝われば伝わるほど彼女の中に悲しさが
浮かんでくる。

「…前田くん…」

「どうした?日野森?」

「…いや…なんでもないの…」

 あずさはそう言うと首を振った。

 言いたかった。

 自分が受けている仕打ちを。

 だが、決して言う事は出来なかった。

…前田くんには…迷惑かけられない…

 自分の事を思ってくれればくれるほど、いや、思ってくれているからこそ
彼女は耕治に対して何も言う事は出来ない。

「日野森…」

 耕治もまた何か言いたげな表情を浮かべたが、それを押し殺す。

 二人の間に沈黙が流れた。

 しかし、その間を打ち破るようにあずさは声を上げる。

「わ、私…、行くね。前田くんの言う通り…少し休むよ」

「…あぁ、それがいいぞ」

 耕治もそれを黙って見送った。

 そして、彼女はゆっくりと寮へと足を進めていく。

…ゴメンね…前田くん…

 心の中で何度も、そう呟きながら。


 だが、寮に戻ったあずさには、過酷な現実が待ち受けている。

 それは彼女の想像を遥かに上回るものだった。







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☆今回より同僚の固有名詞が出てきました。
と言う事は…。皆さんお分かりですね(苦笑