第12話「萌芽(2)」 既に外は明るくなりかけていた。 それでも、日に日に空が白んでいくのは遅くなっている。 また、それに伴い、寒い日が増えていた。 今日も例外ではない。 もっとも、あずさの部屋は暖房が全開に稼働しており、肌寒さを感じる事はなかった。 そんな室内の隅で、彼女は何も身に付けることなく大の字になって横たわり眠っている。 毎日の日課である男たちへの奉仕は、ほんの数分前まで続いていた。 それを物語るように、あずさの肌にはまだ乾く事のない汗や精液がこびり付いている。 また、すっかり乾いた男の汚液痕も乳房や太股にあり、奉仕が長時間に渡って行われた事を意味していた。 そう、ここに至るまで、あずさには睡眠どころか、休憩すら与えられてはいないのだ。 常に誰かがあずさの体を求め、彼女は為すがままに欲望に応えていた。 そして、ようやく出勤前の睡眠を取っている。 それは2時間にも満たないのだが。 しかも、その状況は日に日に悪化していた。 その原因は、この部屋に居座っている男たちの、彼女への慣れだった。 女を知らぬ状態でここに送り込まれてきた彼らだったが、休みなくあずさの体を嬲り続けた結果…いつしか持続性と女を悦ばすテクニックを身に付けていたのだ。 最初こそ、好き勝手に彼女の体に射精していた男たちが、今では1度の射精を行うまでに何度もあずさを絶頂に導いている。 狙っているとはいえ、もともと若さが有り余っており、回数をこなせる若者たちなのだ。 このまま行けば、あずさに与えられる睡眠時間がなくなってしまうのは想像に難しくなかった。 「…あぁ…もう…行かなきゃ…」 1時間後、目を覚ましたあずさは疲れ切った体を起こした。 出勤時間まで残り40分。 そろそろ準備をはじめないと間に合わない時間だった。 もちろん、準備と言っても、体にこびり付いた汚液を拭う事くらいしか出来ないのだが、あずさは壁に手をつきながら立ち上がる。 昨日の男の言葉ではないが、半ば腰の踏ん張りが利かないほど弱っていた。 「…うぅ…」 あずさは、部屋に充満する男臭い匂いと、自らが発したであろう牝の臭気を避けるように洗面所へと向かう。 シャワーを浴びている時間はなかった。 「…遅れたら、マズイよね…」 彼女は大急ぎで肌の汚れを拭うと、昨日着ていた服を再び身に着け家を出る。 もちろん、ショーツとブラジャーは彼女には無縁になっていた。 外は木枯らしが吹き荒れ、その露出した肉に痛いほど響いてくる。 あずさはそんな中、店に向かい歩きはじめた。 さほど距離がある訳ではない。 だが、一歩一歩店に近づいていくたび、あずさの頭の中に様々な不安が過ぎってくる。 …うぅ…今日は…何をさせられるのかな… …また…私…おかしくなっちゃうのかな… …葵さんに…どなられちゃうのかな… …ミーナ…今日は出勤だったかな… そう、この時間だけが、唯一、あずさが理性を優先させられる瞬間なのだ。 店内にいる時のようにユニフォームの一部となっているバイブレーターは身に付けていない。 また、家にいる時のように男に奉仕している訳でもなかった。 それが、本来持っている彼女の誠実さを蘇らせている。 まさに、彼女には心休まる時間はなかった。 店に着くと、あずさは更衣室に向かう。 時間的にギリギリだったため、同じ時間から店に入るメンバーは既に着替えを済ませていた。 彼女は部屋に入る瞬間、女たちの冷たい視線を感じた。 毎日のように見せる淫らな姿と仕草。 そして、無気力に見える姿勢。 ある意味、当然かも知れなかった。 そんな雰囲気に、あずさは心を落としながら自らのロッカーに向き合う。 だが、着替えを済ませ…このドアを閉めれば、自らは彼女たちが思っているような女になってしまうのだ。 その自覚が、更にあずさを苦しめていく。 しかし、だからといって躊躇している暇はない。 この間にも時間は迫ってきている。 …ガチャ あずさは覚悟を決めるとロッカーの扉を開けた。 そこにはいつも身に付けている制服がかかっている。 彼女の体より明らかに小さいユニフォーム。 しかも、そのスカートの内側には、彼女の愛液や相馬たちの精液の痕がしっかりと見て取れる。 あずさは沈み込む気持ちを抑えながら、制服に腕を通した。 肉が締め付けられるような違和感が体を襲う。 彼女の心と同じように…。 そして、制服を着終えると、最後のユニフォームを身に着ける。 もちろん、それはバイブレーターだった。 …にゅぷ… 「…くぅ…ぅ…」 彼女は悩ましい声を上げながら、その野太い張り型を自ら秘部へと誘っていく。 花弁の奥にはねっとりと愛液が溜まっており、挿入には何の抵抗もない。 しかも、奥まで挿し込む事によって、膣に残っていた精液がバイブレーターを伝い垂れ落ちてくるのだ。 既に体は快感を感じはじめていたが、その生暖かい汁が彼女に最後の悔しさを刻み込んでいく。 だが、休む間もなく、あずさは肛門へもバイブレーターを突き入れはじめた。 しっかりと体内に埋まる2本の疑似男根。 もう、理性は掠れていた。 …あぁ… そんな、熱病にかかったような姿で、あずさはロッカーの扉を閉める。 自らの想像を裏付けるように。 ………………… あずさが更衣室から出ようとすると、外から何やら声が聞こえてきた。 向かいには自動販売機が設置しており、そこは女性陣の憩いの場になる事が多かった。 そこで、同じシフトのメンバーが勤務前の雑談をしていたのだ。 …また…私の事…? あずさは下半身を焼くような感覚に苛まれながらも、そっとその会話に耳を澄ませてみる。 ドアを挟んでいるので、明確には聞こえてこなかったが、どうやら自分の話ではないらしい。 「え~、それってホントなのぉ?」 「そうなんですよ、マジなんですって!」 「おめでたい話じゃないか」 「そうですよねぇ、何かみんなでプレゼントしましょうよ」 どうやら、それは、この店で主に厨房を担当していた縁早苗が結婚のために退職するというものだった。 …さ…早苗さんが…? …そ…そうなんだ… あずさも新人の頃から色々と世話になっていたので驚きを隠せない。 「でも?相手は誰なのかな?まさか…前田くんとか?」 「う~、お兄さんは関係ないですぅ」 「わかったわかった」 楽しそうに談笑を続ける女性たち。 もちろん、彼女たちにとっても早苗は欠かす事の出来ない同僚であった。 「…おっと、時間だよ」 しかし、これからと言うところで時間を迎える。 「急がなきゃ」 「あ~、まだ飲み終わってなかったぁ…」 朝礼に参加するため慌ただしく動き出すメンバーたち。 「あれ?あずさは?」 「更衣室から出て来てないみたいですけど?」 「全く、何やってるんだよ」 「どうせオナニーでもしてるんでしょ?」 「ははははは」 彼女たちの蔑みの声が消えたあと、あずさはそっと更衣室から出て行く。 重そうに足を引きずりながら。 その日も、あずさは勤務中に絶頂を迎え続けた。 幾度となく気をやり、その度に植え込みの影でバイブーレーターをローテーションさせる。 同僚たちの目が気になったが、無視でもされているのか彼女を気にかけるものはいない。 …あぁ…すっかり…放置されてるのかな… …でも…そう思うと…疼いちゃう… だが、あずさはその孤独感すら、自らを燃え上がらせる材料にしていた。 店内が空いているのをいい事に、バイブレーターを入れ替えながら秘部への刺激を繰り返している。 それはどう見ても痴女でしかなかった。 そして、一段落つくと、休む間もなくあずさは事務所へ向かう。 「おお、遅かったじゃないか」 「早くこっちに来いよ」 彼女を出迎えたのは島野である。 相馬と長井は今日も不在だった。 「…はい」 あずさは招かれるがままに、島野が座っている席の前へと歩いていく。 その度に、バイブレーターが擦れ、愛液が太股を垂れ落ちていた。 「昨日はあずさにしゃぶってもらえなくて、俺のチンポが寂しがってたぜ」 「……ひっ!?」 あずさは驚きの声を上げる。 それは、席に着いていた島野の下半身が剥き出しになっていたからであった。 黒々とした不気味な男根が真横に勃起している。 「何も驚く事はないだろう?」 「…す、すみません…」 「それじゃあ、さっそく癒してくれよ」 そう言うと、島野は体をあずさの方へ向けた。 「…は、はい…」 あずさは彼の前に跪くと、そのまま男根へと手を伸ばしていく。 それは青筋が浮き出ており、不気味なほどに熱を帯びている。 だが、躊躇する事は出来なかった。 彼女は、何度か男根を扱くと、顔を寄せ舌を這わせはじめる。 独特の悪臭が鼻をつく。 だが、それすらあずさはすっかり慣れきっていた。 そして、男根をしゃぶるたびに、彼女の秘部からは自然と蜜が溢れはじめるのだ。 …ぐちゅ…じゅぷ… その汁に呼応して、バイブレーターが妖しい音を奏でる。 同時に心地よい感触があずさの体に伝わりはじめた。 「…じゅぷ…うぅ…ぷ…」 自然と熱が入るフェラチオ奉仕。 まるで口が第2の秘部であるかのように、男根を締め上げていた。 「うぉ…巧くなったな、あずさ」 さすがの島野も脱帽したように、満面の笑みを浮かべながら彼女の頭を撫でる。 しかし、あずさはそれを受け止める余裕はない。 ただ、湧き起こってくる快感に魘されながら、一心不乱に男根をしゃぶり続ける。 「…ちゅぽ…じぃぷぅ…くちゅあ…」 その動きに、男根が急速に膨らんでいくのがわかった。 …びゅくぅ…びゅるるるるぅ… そして、亀頭の割れ目から、生臭い粘液があずさの口内へと飛び散っていく。 「…はぶぅぅ…ぐぼぉ……ごきゅ…ごきゅぅ…」 その精液はあっという間に喉に溜まると、彼女はそれを飲み干す。 これも本能的な動きだった。 「ははは、すっかり奴隷らしくなってきたな」 島野はその行為に賛辞の言葉を贈った。 あずさは未だ男根を咥え込んだまま、その言葉を受け止めている。 既に理性を失いかけていた彼女は、絶頂に届きそうで届かない苦悩を晴らしたいがゆえ、男根から口を離さなかったのだ。 「これなら…デビューの件は大丈夫だな…」 その姿に、彼は何度も頷くと、意味深な言葉を呟いた。 「…ふぇ…?」 彼女は島野の意図がわからず、男根を離すと彼を見上げる。 「なぁに、あずさにアダルトビデオに出演してもらおうと思ってね」 「…………………」 あずさはその衝撃の言葉に耳を疑った。 いくら体が快感に包まれていても、看過出来る言葉ではない。 同時に、激しい不安が広がっていく。 「…そ、そんな…」 あずさは唇から精液を滴らせながら顔を覆った。 ビデオに出ると言う事は、名実共に彼女の破滅を意味している。 「良かったな。これで、もっと有名になれるぞ」 だが、島野はあずさに選択肢などないかのように、そういうと唇を釣り上げた。 こうしてAV女優・日野森あずさのデビューが決定する。 どんな顛末が待ち受けているのか…あずさには想像する余地もなかった。 第13話へ |
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