18話 剪定(2) その晩。あずさはいつものように少年たちに抱かれていた。 もっとも、研修の話は既に彼らにも知られており、この交わりは壮行会という意味合いが含まれていた。 「あふっ」 床の上で胡座を掻いた男たちに秘部と肛門を貫かれる少女。また、両脇にも男が立っており勃起した男根を彼女に突き付けている。 「……ちゅぷ、くちゅ」 あずさはその野太い肉棒に舌を這わすと、丁寧に奉仕を続けていた。 「……ぁん」 ときおり漏れる甘い吐息。それは下から襲う男根の責めによるものであり、その逞しい逸物は的確にあずさの弱い部分を責めている。 また、肛門を貫いている男は背後から尻と乳房に手を回し、ねっとりとした動きで膨らみを持ち上げると、指先で乳首を転がしなが ら絶え間ない快感をもたらしていた。 初めて交わった時とは比べものにならない動き。 それも全て、あずさが身体を許し続けた賜であろう。まさに少年たちは彼女の肉体を使って女を悦ばせる術を身につけたのである。 「ちゅく、ちゅぽ……」 あずさに口淫奉仕をさせている男たちも同様であった。男根は以前に比べ皮が厚くなったように感じられ、今ではよほど積極的に奉 仕しなければ射精をコントロール出来るまでに成長していた。 そして、そんな男たちを満足させるため、あずさの性戯は否が応でも磨かれていくのである。 「へへ、出すぜ」 男は彼女の頬に肉棒を押しつけると、そのまま精液を放った。 ゼロ距離で顔に広がっていく汚汁。それは殆ど垂れ落ちる事もなく肌にこびりついている。 「なら、俺も出すかな」 それを見た男がすぐに続く。射精したのは彼女の髪であった。 「……あん、あったかい……」 あずさはその感触に酔いながら、うっとりとした顔で男の責めを甘受し続ける。 もちろん、それだけに集中する事はなく、下半身でもしっかりと肉棒を締め付けていた。 男たちはその従順さに気を良くすると、我先にと肉穴を貪っていく。 「はぁ、はぁぁ……熱い、中で擦れてるぅぅ……」 半ば上気した顔で悩ましい声を漏らすあずさ。ぶちまけられた精液は糸を引きながら垂れ下がっており、彼女が尻を振る度に振り子 のように揺れている。 そんな汚らしい姿が彼らの欲望を更に駆り立てるのだ。 「へへ、そろそろ出すぜ?」 「あぁん、お願い――いっぱい、いっぱい出してぇぇ」 あずさは身も蓋もなく叫んでいた。例えどんなに男の存在に怯えていても、いざ交わればこの乱れようである。 救いようがないのは彼女にもわかっていた。しかし、昂ぶった気持ちに逆らう事は出来ない。 ……びゅく、どぴゅ……びゅるる そんな中、激しい程の滾りが膣内と直腸を精液が満たしていく。 「……あぁぁぁ、オマンコ来るぅぅ……!」 その衝撃と温もりにあずさはあっさりと達していた。いつの日か言われた「射精の瞬間が嬉しくて堪らなくなる」という言葉が痛い ほどわかる瞬間であろう。 「……はひぃ、はぁはぁ」 こうして彼女は未だに男根が固さを帯びている事に気を良くしながら、絶頂の余韻に浸り続けるのだ。 翌日。 あずさが研修先の最寄り駅に着いたのは午後になってからであった。寮からは1時間半とそこまで遠くではない。だが、結局――夜 が明けるまで男たちと交わり続けていたため、予定よりかなり遅くなってしまっていた。 もっとも、勤務は夕方からであり遅れる心配はない。また、仮住まいの方は事前に貰った資料によれば必要最低限の電化製品や家具 、布団などが常備されており、彼女が持って来たのは洗面道具と着替えくらいである。 「それにしても……」 だが、全てがクリアという訳ではなく、あずさは辺りの風景を見ながら微かな不安を覚えていた。 自分が歩いている通りは活気こそあったが目につくのはスナックや居酒屋ばかりで、とてもファミレスがあるような場所には見えな かったのである。その上、すれ違う人の中にはこの時間から酔っ払っている者も見受けられ、余り柄のいい地域ではないようだ。 「…………」 そうこうしているうちに、あずさは目的の住所までやって来る。 そこは「マックス」というビデオ屋が営業しており、地図によればその2階に店があるのだ。 「……ここなんだよね?」 あずさは周囲を見渡してみたが、もちろんそれ以外に同じ名前の看板はない。しかし、そのビデオ屋はいわゆるいかがわしい商品を 専門に扱う店であり、ファミレスと不釣り合いなのは明白だった。そんな意識が彼女を更に不安にさせる。 「でも、確かめてみなきゃ……」 あずさはそれでも階段を昇りはじめた。すれ違う事も出来ないほど狭い通路。 すると、そこには確かにあった――「Piaキャロット」という文字が。 「…………」 ドアにかけられた店名を示す木製の壁掛け。もっとも、そのロゴは明らかに本家とは異なっており、似せようとした形跡すら感じら れないものだった。 だが、2階にあるのはこの店だけなのだ。地図が間違えていなければここが目的の場所なのは間違いないだろう。 立ち去る理由は何もなかった。 「…………っ」 あずさは覚悟を決めるとドアを開ける。 そこへ飛び込んできたのは更に狭い空間だった。大人1人立つのがやっとなカウンターに置かれたキャッシャー。また、前方にはピ ンクの暖簾がかけられ、その先を窺う事は出来なかった。 おおよそ見覚えのない構造。 ――ここって本当にファミレスなの? あずさがそう思うのも無理もない話であろう。 「おう、来たか」 その時、見知った男が暖簾から顔を出すと声をかけてきた。 「え? 島野さん――? こ、こんにちは……」 そう、姿を見せたのは中杉通り店サブマネージャーの島野だったのだ。無論、ここが系列店なら鉢合わせしても何ら違和感はない。 だが、彼は私服であり、その無精髭をたくわえた顔からしても勤務中とは思えなかった。 「島野さんもここに……?」 「ふっ、まぁ――そんなとこだな」 「それにしても、ファミレスっぽくないお店に見えますね……」 「あれ?言ってなかったか?」 「え?」 「ここはファミレスじゃなくてヘルスなんだぜ」 「??」 あずさには島野の言葉の意味がわからなかった。 「ようは、客に注文を取って料理を運ぶ代わりに、客に注文を取ってその通りにチンポに奉仕すればいいのよ。ただ、Piaキャロッ トには変わりないから、元気に挨拶するのを忘れるんじゃないぞ?」 すると、彼から常軌を逸した勤務内容が語られるのだ。 「………………」 あずさは愕然としながらも、改めて自らの立場を痛感させられる。どう足掻いても男の欲望から逃れられない自分。 「じゃあ、さっそく働いてもらうとするか、毎日チンポをしゃぶってるあずさなら余裕だろ? 基本的にフェラだけだしな」 「基本的に、ですか?」 「おう、あくまで本番行為は禁止にしてるからな。だけど、それを破ってもペナルティはない。常連の中には生ハメ前提で来る奴が多 いが、もちろんどんな行為でも望まれればきっちりやってもらうぜ」 この業界に関しての禁忌事項はあずさにはわからない。それでも一つだけはっきりしていたのは客が何を求めようと店は守ってくれ ないという事である。 「この辺りはすっかり寂れちまってるからな。他と同じ事をやってたら客なんて来ねぇのよ。もっとも、そのおかげで働きに来る奴も 長続きしなかったが、あずさが来れば安心だな」 「…………っ」 しかも、例えここが店の名前が同じだけの別空間だとしても、派遣されたのは紛れもない事実なのだ。従って先日のAV撮影のよう に拒否する権利は存在しなかった。 言われるがままに沈んでいく少女。 勉強や遊びに励み、恋をし、将来を夢見る暮らしは別世界の話に思えてくる。 「ほら、さっさと仕事場に行くぞ」 「…………」 あずさは悩む暇も与えられず、島野の後ろに着くと店の奥へ歩を進めた。 「ほれ、ここだ」 彼女が連れて行かれたのは3帖ほどの空間である。壁にはシャワーが設置されており、室内にはベッド代わりであろうか背もたれの ない長椅子が置かれていた。また、窓はなく見た目以上の閉塞感が感じられる。 「そろそろ客が来るぞ?早く脱げよ」 「え?」 「え?じゃねぇだろ?この部屋にいる限りお前は裸で客の相手をするんだよ」 「…………」 あずさはすぐに服を脱ぎはじめた。男たちに対する恐怖は身体に染みついており、服従という形で示している。そのため彼女は恥じ らう事なく生まれたままの姿を島野に晒すのだ。 「あの、島野さん?」 「どうかしたか?」 「何人くらいの男の人を相手にすればいいんでしょうか……?」 「ふっ、そうだな。今日の出勤はあずさ1人だから、ざっと30人ってところだな」 「さ、30人――ですか?」 「へへ、心配するなって、1人あたりの時間は15分って決まってるからよ。しかも、時短はあっても延長はないから、頑張ればそれ だけ早く終わるぜ?」 島野はさらっと口にしたが、それほど単純な話ではない。 時短があると言うが、働き手が長続きしない状況を鑑みれば客次第である可能性が高いのである。それなら30人を捌くのに延長な しで450分、すなわち8時間弱の拘束と考えて差し支えなかった。今の時間からだと終了は日付を余裕で跨ぐ。 それは、これまでと何ら変わらない過酷な労働であった。帰宅後に少年たちの相手をする必要がないのが救いだったが、この場所で 奉仕しなければならないのは初対面の男なのである。普段より楽になるとはとても思えなかった。 「それから、この部屋はカメラで監視してるからな。それを忘れるんじゃないぞ?」 島野はそんなあずさの気持ちを汲む様子もなく、脱いだ服を拾い上げると部屋を後にする。 「…………」 それをただ呆然と見送る少女。 こうして、あずさの風俗嬢としての一日がはじまるのである。 最初の客が部屋に入ってきたのはそれから数分後の事であった。 中肉中背の30代くらいの男。こんな時期にも関わらず上半身はタンクトップ1枚という出で立ちであり、そこから伸びる腕は逞し い程の筋肉に覆われていた。 「ぴ、Piaキャロットへようこそ」 あずさは股間の前で手を組むと、店と同じような挨拶を男に向ける。もっとも普段と違うのは彼女が一糸まとわぬ姿だった事であろ う。 恥ずかしさや悔しさがない訳ではなかったが、島野の目が光っている以上、躊躇は許されないのだ。 「へへ、新入りか。随分と可愛いじゃねぇか」 「あ、ありがとうございます」 「なら、まずはシャワーでもかけてもらうとするかな」 「はい」 言われるが侭にあずさはシャワーの用意をはじめた。 男も服を脱ぎ捨てると彼女の前に裸を晒す。その身体は全体的に毛深く、特に股間から太腿にかけての茂みは彼女がこれまで経験し た相手の中で一番であった。 ――うぅ……。 あずさは身の毛がよだつ気分だったが、それを押し殺すと男にシャワーをかけはじめる。 「ほら、もっと近くでやれよ」 「あ、はい」 促されるままに身を寄せる彼女。男根は既に固さを帯び始めており、露出した亀頭はシャワーに濡れ光っていた。 「………………」 あずさはその肉棒に指を伸ばすと優しく手の中に包み込む。 それは身体に染みついてしまった男を悦ばせるためのアルゴリズムに他ならない。 「へへ、可愛い顔してずいぶん積極的じゃねぇか?」 「……それは」 「なら、さっそくしゃぶって貰うとするかな」 男は目を細めると濡れた身体のままシートの上に横になった。 「…………」 あずさは彼を跨ぐと、その毛深い股間へ顔を埋める。 「……ちゅぷ、じゅる」 唇で竿を扱きながら躊躇なく肉棒を咥え込む少女。 男のきつい体臭はシャワー程度で落ちる事はなかったが、彼女はそれを強引に押し殺すと奉仕を続けた。 「ちゅ、ちゅる……くちゅ」 すると、あずさの心は――臭いはもちろん、おぞましいと思っていた毛深さすらも男らしさとして感じられるようになるのだ。 「ふぁむ、じゅるる……じゅぶっ」 彼女はいつの間にか、彼の肉棒を愛おしそうにしゃぶっていた。 それは職業的というより、小間使いの如く男に奉仕する姿であろう。 「へへ、もっと奧まで咥えるんだ」 彼もその雰囲気は理解しているようで、当然のように行動を求めた。 「ふぁい……」 あずさはすぐに根元まで肉棒を咥え込む。一緒に陰毛までもが口の中に紛れたが動きが鈍る事はない。 「次は袋も頼むぜ」 「……ちゅぷ、はい」 まさに男の下僕であるかのように彼女は玉袋を口に含むと、丹念に舌で転がしていく。 その全てを自らの唾液で染めながら。 「……おぉ」 そんな奉仕に満足した男は呻きながら精液をぶち撒ける。 宣言はしない。自分より下の身分の者に気を遣う必要はないのだ。 「じゅるる、ちゅぷ……ごきゅ」 あずさはその生臭い粘液を口で受け止めると、当然のように嚥下していた。 「……ちゅぷ、くちゅ……ちゅる……」 そして、尿道からも精液を吸い上げ、男根全体に舌を絡めながら後始末をはじめるのである。 結局、制限時間を使い切ったのは言うまでもない話だった。 こうして、あずさの風俗デビューは滞りなく幕を開けた。だが、その後もひっきりなしに客は続き、彼女は休む暇もなく奉仕を繰り 返す。 もちろん交わりを求める男も多く、それ以外にも要求はパイズリ、足コキ、イラマチオ、肛門舐めなど多岐に渡った。また、男に見 られながらの放尿や膣内観察など、客の好奇心を満たすような行為も当然のようにこなしていくのである。 決して諦めの極地ではない。インターバルなしで痴態を繰り返すうちに適応してしまっていたのだ。天賦の才と思われても致し方な い状況。しかも、このように様々な奉仕を行う事で心と身体は更に開拓されていた。 「はぁ、はぁ――ありがとうございました」 最後の客を見送った時、部屋のデジタル時計は1時40分を示していた。もちろん、それは午前である。 奉仕した客は37人。うち16人の男根を膣内に迎えており、彼女がこれまで交わった相手を僅か9時間超で3倍に更新した事にな る。しかし、いくら数を増やしてもその中に唯一身体を許してもいいと思った男の記憶はない。 その事実はこれから日を追うごとに自らの肉の味を知る者が増えていくであろう現実と相まって、あずさに歯痒い感覚をもたらして いた。 ――もう、ダメかもしれないけど……。 ――寮に戻ったら、正直に気持ちを伝えよう。 ……………… 「……前田君」 あずさは静かにそう決意するのだ。 第19話へ
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