19話 剪定(3) 研修期間中、あずさが寝床にするアパートは店から徒歩10分ほどの場所にあった。 閑静な住宅街といえば聞こえはいいが、周囲には空き地や廃墟が目立っており不気味な印象は否めない。 「………………」 そんな中、あずさはその場所に辿り着く。 今にも朽ち果ててしまいそうな2階建てのアパート。だが、彼女はその光景に落胆する余裕もない程に疲れ切っていた。 それもそのはず、勤務が終わった後も島野の性欲処理を努めさせられ、時間は既に3時を過ぎている。その上、次のシフトは正午か らであり、少しでも横にならなければとても体力が保ちそうになかった。 ――早く寝たい……。 あずさはうとうとしながらも自分にあてがわれた部屋の前に立つ。 当たり前のように切れている外灯、暗がりでもわかる錆だらけのドア。また、窓や壁にはヒビや亀裂が入っており、最悪の環境であ る事が容易に想像出来る。 ――カチャ それでもあずさは鍵を開けると家の中に入る。選り好みしている余裕などありはしないのだ。 室内は狭い台所と6帖の居間によって構成されていた。暗くて細部まで見渡す事は出来なかったが、雨風を凌ぐには支障はない。 ――もうダメ……。 彼女はその事実に安堵すると、用意されていた布団の上に倒れ込む。そして、敷く余裕もなく全てを忘れ泥のように眠りにつくのだ。 それは久方ぶりに味わう1人だけの睡眠だった。 外はいつしか太陽が昇っており、晴れ渡った青空が広がっていた。 アパートに他の住人は住んでおらず、ときおり目の前の路地を通る自転車やバイクの音が響く程度で、辺りは静まりかえっている。 そんな中、あずさは今も眠っていた。 途中で目を覚ます事もなく、重なった布団に凭れ掛かる少女。 これは帰宅した時と何ら変わらない状態であり、彼女の疲労度の高さを物語っている。 そんな時だった。 ――ドンドン 静寂を打ち破るようにドアをノックする音が響いた。それは遠慮の欠片もなく室内に轟いている。 ――え……何? あずさは朧気な意識の中そう思った。身体はまだ深い睡眠の中にあり何が起こっているのか理解出来ないのだ。 ――ドンドンドンドン だが、ノックは休む事なく続いている。この部屋に誰かいるのをわかっているかのような行為。 ――うぅ……いったい誰なの? あずさはこの時になってようやく現状を把握した。だが、疲労は未だ色濃く残っており、布団から身体を起こす事も億劫である。 辛うじて動いた手で携帯電話を引き寄せてみるも、出勤まではまだ時間があり着信履歴もない。もちろん、相馬たちがアポなしで訪 れている可能性はあったが、そこに頭が回らない程、彼女は疲れ切っていたのだ。 ――もう少し、寝かせて……。 あずさは心の中でそう呟くと再び目を閉じる。 もう少しだけ睡眠を貪るために。 ――ガチャ すると、ノックしていた音が止まり、ドアが何事もなかったように解錠される。この澱みのなさと早さは明らかにピッキングの類ではない。 「……え?」 あずさがそれに気づいた時、目の前には鍵を持った男が立っていた。 明らかに見知った顔。本名こそわからなかったが、相馬たちが鍋さんと呼んでいた事だけは覚えている。 「ふぉふぉ、久しぶりじゃの」 そう、彼はAV撮影の際にあずさと交わった中年だったのだ。 「……ど、どうして?」 「そりゃ、儂の家じゃからの」 「えぇ?」 「お主が近くの風俗で働くって話を聞いたからの、せっかくじゃから儂が面倒を見てやろうと思ってな」 「…………」 「儂は鍋島伊三じゃ、改めてよろしくのぉ」 伊三は太鼓のように膨れた腹を掻きながら笑った。 「……よろしくお願いします」 あずさも頭を下げる。本意ではなかったが、彼の部屋で寝てしまったのもまた事実である。だが、例え一つになった経験があるとは 言え伊三に心を許したいとは思わなかった。 「ふぉふぉ、ダメじゃな」 「え?」 「お主は儂の部屋に厄介になる身じゃぞ?そんな会釈程度で申し訳ないとは思わんのんか?」 「……っ。では――ど、どうすればいいのでしょう?」 「ふぉふぉ――簡単な事じゃ、もっと心から頭ぁ下げて自分に出来る事を儂にお願いするんじゃ。じゃったら置いてやってもええぞ」 「………………」 あずさは伊三の意図を理解する。そもそもこの話は好意ではなく、彼女を貶める事が前提になっているのだ。 自ら破廉恥な女を演じなければいけない流れ。しかも、そのシナリオを描くのはあずさ自身に他ならなかった。 しかも、拒否は出来ない。収入はほぼ全てを搾取されており、金銭面からも現状に抗う事は絶望的なのである。無論、それを念頭に 置いた上での仕打ちであろう。 ――結局、こうなるのね……。 半ば諦めに似た意識。今頃気づいたが、部屋のあちこちにはいかがわしい本やDVDが置かれ、それらで欲望を吐き出したティッシ ュが畳の床に散乱していた。 あずさに求められるのはその紙の代わりを務める事なのである。 「…………」 彼女は伊三の前に跪くと、そのまま頭を下げ土下座の格好を取った。 「こ、これから伊三様の性欲は、私が……処理致しますので――。ど、どうか……この家に、置いて……下さいませ」 そして、自分でもどうにかなってしまいそうな異様な願望を口にするのだ。 「ふぉふぉふぉ、なかなかの心がけじゃの。じゃが、もう一つ――お主に守って貰いたい事があるんじゃ」 「そ、それは?」 「まぁ、その前に……まずは再会祝いじゃ! 愉しませてもらうとするかの」 彼はおもむろにズボンを下ろし男根を剥き出しにする。それは勃起こそしていなかったが十分過ぎるほどの長さと太さを有しており、 悪臭を伴いながら存在感を示していた。 「……ごくっ」 あずさは殆ど反射のように両手を肉棒に添える。言葉にする事は抵抗があってもいざ男を目の当たりにすればこの有様である。 しきりに竿を這う指。それにより男根は固くなり凶悪さを増していくのだ。 「ぁん……」 無意識のうちに指に力が籠もるのがあずさにもわかった。だが、止められない。奉仕をはじめた以上、男が満足するまで終わらない のである。 そんな静かだが熱の籠もった愛撫に男根は完全に勃起していく。 「……ちゅぷ、くちゅ」 あずさはその反り返った剛棒にねっとりと舌を這わせはじめる。そして、全てを唾液で染めながら口内へと導くのだ。根元までは咥 え込めそうになかったが奉仕には支障はない。 「ふぉふぉ、美味そうにチンポをしゃぶってくれちょるのぉ」 「ふぁぶ、じゅるる」 彼女は伊三の言葉に気を良くすると、男根を唇で扱いていた。 舌は亀頭を満遍なく舐り、少しでも反応があればそこを重点的に責め上げる。また、指先でも竿から浮き出た血管を辿りながら、男 が悦びそうな場所を探すのだ。 その動きはこれからも彼に尽くすという意思表示に他ならない。 ――うぅ……。 もちろん、全てを許容していた訳ではなかったが、身体に擦り込まれた快感と欲望が思考を完全に停止させていた。 「……ふぁぶ、ちゅぷ」 あずさは本能の赴くままに男根をしゃぶりあげる。 しかも、それでは飽きたらず今度はその怒張を乳房で挟み込んでいくのだ。 柔らかい膨らみに埋没する肉棒。 あずさは両側から乳房を押しつけると、ねっとりと愛撫を加えた。それにより男根に染みついた唾液と汗が混ざり合い卑猥な水音を 奏でる。 「あったかい……じゅる」 そんな卑猥な温もりに彼女は物欲しそうに男根を見つめていた。 「ふぉふぉ、どうかしたかの?」 「……うぅ」 伊三の問いに言葉を詰まらせるあずさ。それでも、乳房は小刻みに肉棒を扱き続ける。 「言わんと、くれてやらんぞ?」 「あ……、その……おチンポ、もっと欲しいです」 「ふぉふぉ、ならそろそろハメてやるけ、ケツ出してこっちに向けるんじゃ」 「ちゅぷ……はい」 あずさは言われるがままに彼に背中を向ける。そして、上半身を床に投げ出すと尻を突き出しスカートを降ろした。 その下にはショーツはなく、剥き出しの膨らみが露わになった。しかも、その奧にある花弁は既に湿っており、尻の内側が艶やかに 滑っているのがわかる。 それはまるで熟れた果実のようであった。 「ふぉふぉふぉ、相変わらずいやらしいケツしちょる」 男はその前にしゃがみ込むと、そのまま尻を抱えた。 すぐにその中央にある花弁には熱を帯びた肉の刀が押しつけられる。それは容赦なく秘部に食い込み、強引に肉を掻き分けていく。 「……ぁあ」 思わず漏れる甘い吐息。 早くも秘肉は肉棒に屈しはじめていたのである。既に湿っていた秘部からはねっとりとした愛液が漏れ、歓喜の涙のように野太い男 根を濡らしていた。 肉棒が根元まで埋まって行く度に熱くなる下半身。伊三のモノが膣内を完全に満たすとわかっていれば尚更であろう。 「ふあぁぁ……」 事実、半分ほど竿を咥え込むと、あずさはこの上ない多幸感に包まれていた。 全てを委ねたくなるような快感。 そうなってしまえば、後は本能の赴くままだった。 「あん……太いの、埋まってるぅ」 あずさは悩ましく腰を振りながら男根の温もりを貪り続ける。尻肉には男の指が食い込んでいたが、その拘束感すら快感として昇華 していくのだ。 次第に高まっていく鼓動と体温。それは彼女を女から牝へと変貌させるトリガーであろう。 「気持ち良さそうじゃのぉ」 「は、はい……気持ち――いいです」 「何が気持ちいいんじゃ?」 「おチンポです」 あずさは躊躇う事なく即答した。既に男根は膣内を満たしており、先端が子宮口を圧迫してるのがはっきりと感じられる。また、男 がもたらす負荷は更に強さを増し、肛門までもが押し広げられていくのだ。 ――うぅ、ダメ……このままじゃ私……。 ――自分が自分じゃなくなっちゃう……。 彼女は快感を貪りながらも、それに怯えていた。 救いようのない状況。しかし、頭ではわかっていても歯止めが利かないのである。しかも、その理性すら日を追うごとに希薄になっ ているのがはっきりとわかった。 「ふぉふぉ、素直じゃの。なら、自分でイってみるんじゃ」 追い打ちをかけるように男から命令が下される。拒否は出来ない。いや、拒否するという選択そのものが脳内から失われていたのだ。 「……はぁ、はぁ」 あずさは肉壺と男根が水平になるように尻を持ち上げる。それによって秘部からは大量の愛液が溢れ太腿を伝ったが、動きが止まる 事はなかった。そればかりか秘口を満たす蜜を潤滑剤にしながら、ゆっくりと腰を振りはじめるのだ。 生々しい水音が室内に響いた。 ――うぅ……奧まで届いてる……。 ――気持ちいい……これ、気持ちいいの……。 しかも、その交わりは目に見えて浅ましくなっていき、結合部から奏でられるメロディもトーンが外れていくのである。 「ふぅ……ひふぅ、……ひぁぁぁぁぁ!!」 あずさは鼻息を荒くしながら男根を貪り続けた。 そして、あっさりと絶頂に達する。 「ひぐっ――」 脳がひっくり返るような感覚。これまでも幾度となく達していたが今回は格別であった。 「ふぉふぉふぉ、随分と早くイったもんじゃの」 「……はい、気持ち良かったから……」 「ふぉふぉ、いい心がけじゃの。ならさっきの続きじゃが――」 それは、先ほど言いかけた”守って貰いたい事”に関してである。 「今日からお主は仕事中にイった数を儂に報告するんじゃ」 「……?」 あずさにはその意図がわからなかった。 「お主には常に儂のチンポが一番だと思ってもらうけぇの。そのためにゃ、儂のチンポでその倍はイってもらわんといかんのじゃ」 「…………っ」 だが、男の言葉を理解すると背筋が寒くなるのだ。 何しろ、たった今も達したばかりである。いったん火が点いてしまえば相手が誰であろうと絶頂を迎えられそうな自分がいた。 その事実は、本当の牝になるための片道切符である事を意味しているだろう。 ――そんな……どうしたらいいの? あずさは返答に困っていた。 拒否できない事は明白だったが、自分から火中の栗を拾う気にはなれないのである。 「ふぉふぉ、何を悩んでおるんじゃ」 伊三はそんな彼女を見透かしたように腰を動かしはじめた。 男根は少しも衰える事なく勃起しており、その動きに合わせ膣壁を刺激していく。 「……あぁん……」 すぐに甦る肉欲。あずさは無意識のうちに尻を振りそうになったが、それはギリギリのところで堪える。しかし、秘部は熱く蠢き奧 から濃い蜜を溢れさせるのがわかった。 ――うぅ……。 ――もうダメ……。 「わかりました……」 あずさは為す術なく男の提案を受け入れていた。いや、正確には目先の快楽に浸るため鵜呑みにしたに過ぎない。 だが、こうなった以上はもはや後戻りは出来ないのだ。 「ふぉふぉ、いい娘じゃ――褒美に今度は儂がイかせてやるけんの」 「…ああぁ、嬉しい」 目を輝かせると男の責めを受け入れるあずさ。 そして、出勤時間ギリギリまで、めくるめく快感に浸るのである。 伊三の肉棒を心に刻みながら。 第20話へ
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