第4話「暗転」 …私は私であり続けたかった…。 「…ほら、起きろよ」 途切れていた意識は、微かに響く声と、何かが頬に当たる衝撃で覚醒していく。 どんよりと美汐の視界が開けた。 「………」 だが、その先に見えたものは絶望だけだった。 美汐の頬を打っていたもの、それは男の怒張。 顔全体は、その先から出る透明な粘液ですっかり滑っていた。 そして、全裸の男たちが美汐を取り囲んでいる。 「……っ…」 美汐は改めて今日の悪夢を思い出す。 再会と絶望。 美汐はきつく手を握ると、何かに耐えるように俯いた。 「けっ、反応がねぇ女だな」 「さすがにちょっと疲れさせすぎたか?」 「全くだな。これじゃあ肝心な時にマグロになっちまうぜ」 男たちは美汐の頭の上で、不気味な会話を交わす。 …くだらない…。 しかし、美汐はそんな男たちを見てそう思った。 …やっぱり…この人たちは…ケダモノね…。 自分たちの欲望だけを考えてる…。 そんな人たちが真琴の事を何か言えるの…? …あの子は…。 そして、怒りにも似た悲しみを浮かべ、美汐は伏せった。 だが、男たちの会話は美汐の想像もしない方向へ進みはじめる。 「そうだ、あれ使おうぜ」 「あれってなんだよ?」 「ほら、この間見つけたのがあっただろ?」 「おぉ、その手があったな」 「でもよぉ、容量がわかんねぇぜ。下手すると死んじまうんじゃねぇのか?」 ……私が死ぬ…? 美汐はその会話を他人事のように受け止めていた。 「…それじゃあ持ってくるぜ」 だが、男たちの会話は纏まったようで、一人がコートを纏うと部屋から出て行く。 「さて、面白くなってきたな」 リーダー格の男が美汐にそう話しかける。 しかし、彼女はそれに反応する事はなかった。 ただ、地面に這いながら部屋の隅に横たわる真琴の姿だけを見ている。 「持ってきたぜぇ…」 程なく、男が息を切らしながら戻ってきた。 腕には薬箱のようなものを抱えている。 「じゃあ、早速試してみるか」 男はその箱をテーブルの上に置くと、中から透明な液体が入っている小さな瓶を取り出す。 そして、同じく箱の中にあった注射器を持つと、その瓶の口に突き刺し、ゆっくりと中身を 吸い上げた。 「さぁ、お注射の時間だぜ、美汐ちゃん」 男は笑いながら、男たちから目を背けていた美汐の前にしゃがみ込むと、注射器を近づける。 針の先からは、液体が流れていた。 「………」 だが、それを見ても美汐に反応する気は起こらなかった。 既に自分は助からない。 真琴を助けてと嘆願した時に、そう悟っていた。 だから、その注射器が自らに何をもたらすのかにも興味はなかった。 「動くんじゃねぇぞ?」 男は、全く無反応な美汐に少しがっかりしながらも、相変わらず威嚇するような声で、彼女の 細い腕を握る。 そして、慎重に針を刺すと、謎の液体を体内に注いでいった。 美汐は腕に刺さる注射針の痛みにも表情を変えず、ただそれを見ている。 やがて、その全てが美汐の体内に流れ込んだ。 「へへっ、これでOKだ…」 男は不気味に笑いながら、針を抜く。 そして、ゆっくりと美汐から離れた。 「………」 美汐は依然、その針の痕を見ていた。 うっすらと流れ出す血。 しかし、その視線が少しずつ歪んでゆくのがわかった。 既に薬が美汐の体内を包んでいる。 そして、すぐに反応は訪れた。 「…あ…ぅぅ……ひぐぅ…」 美汐は、突然押し寄せてくる変化に悲鳴のような声を上げる。 急激に体温は上昇し、心臓の鼓動が頭まで響きそうだった。 そして、襲い来る激しい嘔吐感と震え。 美汐は脂汗と涎を垂らしながら、自らの体の変化を拒むようにもがいた。 「…はぅぅ…ぅ…」 しかし、次の瞬間、急激に体の力が抜けた。 そして、今襲っていた苦痛が嘘のように消え去り、体験した事のない気持ちの良い感覚が 美汐を包む。 まるで、空に浮いているような気がした。 「ひゃ…ぅ…。ど…どうしちゃったの…?」 美汐は床に倒れ込み、天井に目をやった。 部屋を灯す電灯が数倍の光を醸し出しているようだった。 「へへ、どうだい薬の効果は?」 男たちが美汐の視線に入って来る。 だが、そんな男たちにも美汐は恐怖感も嫌悪感も感じなかった。 冷めている訳ではなく、今まで自らを苛んできた思いすら完全に麻痺していた。 美汐は心の奥で、必死にその状況を拒んだが、心も体も奮い立つ事はない。 そして、恥じらいもなくその未成熟の体を晒しながら、うっすらと笑みを浮かべた。 「…き…きもち…いい…」 美汐は素直に自らを包む快楽に溺れる。 他の事など、どうでもよくなっていた。 「そうか、そいつは良かった。それじゃあ、もっと気持ち良くしてやろうか?」 男はそんな美汐に更なる堕落への道を示す。 「…はい…お願いします…」 しかし、美汐は疑う事すらなく、その囁きに素直に頷いた。 既に自らの快楽以外の事は考えられない。 「よし、じゃあたっぷり可愛がってやるぜ」 男たちは美汐を抱き上げる。 美汐も全てを委ねた。 そして、男は美汐の太腿を広げると、その中央の秘部に男根をあてがう。 もう一人も、彼女の尻を抱えていた。 「さぁ、天国に連れてってやるぜ」 そして、ほぼ同時に美汐の下の口に挿入をはじめた。 小振りな秘部が捲れあがる。 薄いピンクの蕾が広がって行く。 「…ひぃあぁあ!」 美汐はその衝撃に目を見開き叫んだ。 激しい痛みが体を駆け巡る。 だが、今の美汐にはその痛みを痛みとして認識することはなかった。 逆にそれは今まで知ることのない快感となり、彼女の体と心を襲っていく。 「…ひぃぃ…ぅあぁ…」 そして、言葉にならない言葉を発し、その未知なる快感を受け止める。 目は完全に光を失い、だらしなく口元は歪んでいた。 「へへ、処女を奪って、こんなに喜んでもらえるとはな」 「ケツとマンコを同時になんて、一生自慢出来るぞ」 男たちは口々に笑ったが、それすら美汐の意識を昂揚させていく。 「うぅぅん…もっとぉ…」 秘部や肛門からは激しく鬱血し、男の動きに合わせ妖しい音を響かせていたが、美汐は 目を見開き、その音を更に大きくさせるように自らも腰を振りはじめた。 ほんの数分前の美汐からは想像も出来ない姿だった。 「けっ、じゃあ俺のチンポもしゃぶってくれよ」 一人あぶれた男が、そんな美汐の前に進み出た。 今にも暴発しそうな男根を握り、それを美汐の顔に突き立てる。 美汐は夢でも見ているような表情で、その怒張を眺めた。 無意識に涎が口の端から滲む。 「…はい…」 そして、美汐はゆっくりとその男根に手を伸ばした。 躊躇いなど存在しない。 …ぺろっ…くちゅ… そして、自らの口元に引き寄せると、アイスクリームでも舐めるように、その赤黒い男根に 舌を這わせた。 亀頭や青筋を立てた竿がみるみるうちに唾液で光っていく。 美汐はまるで全ての汚れを削ぎ落とすように丹念にしゃぶり続けた。 「ほれ、腰が止まってるぜ」 しかし、今度は荒々しく美汐の中に男根を突き立て、尻を抱えている男が美汐を促す。 「…はいぃ…」 美汐は荒淫の表情で呟くと、男に言われた通り再び腰を振る。 口も休める事はなかった。 止めど無く続く快楽と行為。 美汐は完全に我を失い、それにのめり込み続ける。 「うぅ、出る…」 やがて、男たちは美汐の体に精液を注ぎはじめる。 膣や直腸に流れ込む液。 顔や口にも男の熱い粘液が飛びかかる。 「…はぁ…ぁぁ…ん」 美汐は虚ろな目で、その感覚に喘いだ。 そして、しきりにその汚液を顔になすりつける。 男たちも休む事はなかった。 余韻に浸ることもせす、それぞれが場所を変わると、美汐の穴と言う穴を堪能していく。 「はぁ…ぁ…いぃ…よぉ…」 美汐もそれを甘受するだけだった。 既に慎みも失われ、弛んだ表情で男根に貪りついている。 体は汗と精液で濡れ光っていた。 「へへ、すっかり淫乱になっちまったなぁ?」 「それだけ素質があるって事だろ?」 「…うぅ…き…気持ち…いいだけ…です…」 美汐は乳房を鷲掴みにされながら、悩ましく答えた。 「へっ、何が気持ちいいんだ?」 美汐の言葉に男は更に突っ込みを入れる。 「…うぅん…」 「ほれ、言ってみろよ」 「……お…ちんちん…」 美汐は照れながら答えた。 「けけけ、じゃあもっと気持ちよくしてやるぜ」 男たちは征服感を刺激され、更に激しく美汐の体を責め続けた。 どのくらいの時間が過ぎ去ったのだろう。 美汐と男たちの乱交は小休止を迎えていた。 しかし、その室内は未だ余韻を残すように熱気に包まれている。 男たちは部屋の隅で、雑談を交わしながら煙草を吹かしていた。 そして、部屋の中央には美汐が仰向けに倒れていた。 体中を粘液で光らせ、呼吸の度に秘部や肛門からは血と混ざり精液が流れ出ている。 まるで、この部屋に来た時の真琴のような状態だった。 「………」 だが、美汐には屈辱感はない。 ただ、物足りなさだけが体を支配している。 「……ぅう…」 しかし、それは不意に終りを迎えた。 美汐の体を蝕んでいた薬が切れはじめ、ゆっくりと本来の姿を取り戻していく。 それに伴い、じわじわと蘇る感覚。 そして、それと同時に、美汐を地獄が襲った。 快楽だと思っていたものが痛みに変わり、自らを襲っていた現実を心が蝕む。 「……ひぃ…」 美汐は床に平伏しながら、苦痛の声を上げた。 瞳からは止めど無く涙が零れ落ちる。 しかし、それは体の痛みからではなかった。 もちろん、激しい苦痛が下半身や乳房を襲ったが、そんな事は美汐にはどうでもよかった。 美汐は悲しかったのだ。 快楽に身を委ねてしまった自分が。 そして、それを嬉々として受け入れた事が。 しかも、その相手は忌み嫌い、蔑みの目で見た男たちだった。 「くぅぅ……」 美汐はまるで自分自身を拒絶するように激しく震えた。 すぐに嘔吐感が彼女を襲う。 「…ぐ…ぅ…はっ…うぅぅ…」 そして、美汐は口から精液の混じった胃液を吐くと、声を上げて泣いた。 …私も…同じ…。 心の中を自らに対する蔑みが渦巻く。 おかしくなってしまいそうだった。 だが、そんな美汐をさらに過酷な事態が襲う。 「へっ、薬が切れたみたいだな?」 「………」 「まぁ、でもとりあえずは中毒になってもらわねぇと困るからな」 男の手には注射器が握られていた。 その中には、先ほどの薬品がたっぷりと入っている。 「…ぅぅ…」 美汐は体を竦めた。 だが、逃れられるはずもない。 男は再び美汐の腕を取ると、ゆっくりとその液体を注射していく。 「また、気持ちよくなれるぜ」 そして、注射器を抜くと男が笑った。 美汐は俯き、震える。 その顔は快楽という名の堕落に怯えていた。 第5話へ |
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