第5話「守れなかったもの」 …死にたかった…でも…死ねなかった… 薄暗い室内。 暖房は入っていない。 しかし、その部屋は生暖かい空気が充満していた。 漂う汚臭。 その部屋の隅に二人の少女が横たわる。 美汐と真琴。 二人とも古ぼけた人形のように生気を失い転がっていた。 だが、美汐は微かに体を震わせている。 身も心も既に以前の美汐ではなかった。 自らに対しての蔑みや哀れみも、とうの昔に消え去っている。 何も考えられなかった。 ただ、無意識に何かを求めている。 その時、部屋の扉が開いた。 中に入ってきたのは、二人を地獄に落とした男たちだった。 「…どうだ?気分は?」 男は美汐と目が合うと、にやけながら声をかける。 美汐の目が少しだけ生気を帯びた。 そして、頬を振るわせながら声を絞り出す。 「…ひぃぐぅ…ぅぅ…。お…おねがい…し…ますぅ…く…くす…り…くだ…さい」 素直で切実な願いだった。 既に何十本と打たれたかわからない薬だったが、早くもその効果を失い、激しい苦痛と衝撃を 美汐に与えている。 その度に繰り返される発作。 「…おねがい…」 そして、美汐は瞳に涙を為ながら懇願する。 かっての内に秘めた強さはなかった。 ただ、己の欲望と苦痛の回避のみを求めている。 「へへ、それじゃあ…立ってみろよ?」 「…ひぁぁ…はぃぃ…」 美汐は男の命令に素直に従うと、よろけながらも立ちあがった。 当然、彼女は服を着ていない。 身につけているものといえば、首に巻かれた犬用の首輪と皮製のタイツだけだった。 そして、乳首には無惨にもピアスが填められていた。 「…はぁ…はぁ…こ…これで…いいですか…」 美汐は腕をそのまま下ろし、全裸の体を隠すこともせず、その全てを男たちに晒す。 あの日以来、風呂にも入っていない体は、彼女の汗と男たちの精液によって、すっかり汚れ 切りひどい悪臭を放っていた。 だが、今の美汐にはそんな事はどうでもよかった。 ひたすら、自らを溶かす魅惑の薬品を待ち望むように悩ましく腰をくねらせる。 だが、男たちは、それでも美汐に更なる恥辱を与えるべく口を開いた。 「じゃあ、まずはマンコ見せてみろ」 「…は…はいぃ…」 美汐は男の命令に素直に頷くと、少し体を逸らし、下半身を突き上げる。 そして、その小さな秘部を男たちに晒した。 自らの愛液と男の粘液で濡れ切っている花弁。 それを美汐は指で持ち上げて見せる。 そこまでやるようには言われていないが、一刻も早く自らの欲望を叶えようと、彼女は 本能的に男たちに媚びていた。 「…こ…これで…いい…です…かぁ…?」 美汐は半ば浅ましい表情で男たちに問い掛ける。 大きく開かれた秘部からは、膣に溜まった精液がとろとろと零れ出していた。 「…じゃあ、その穴は何に使うか言ってみろよ?」 男は意地悪く質問する。 「…はい…。ここは…みなさまの…お…ちんちん…を入れていただき…た…のしんでもらう …あな…です…」 しかし、美汐は気にする事なく必死に答えた。 意識がはっきりしていれば、なんの躊躇もなく言えるのだろう。 それだけ、今の彼女は欲望に支配されている。 「けけっ、よく言えたな…。それじゃあ打ってやるか」 男はテーブルの上の注射器を持つと、美汐にそれを見せる。 「…おねがい…します」 美汐はまるで綺麗な花や景色を見るような顔で嬉しそうに注射器に目を向けた。 体もその瞬間を待ち望むように、小刻みに震えている。 すぐに、悪魔の薬が美汐に注がれた。 注射針の痛みすら、彼女にとってはこれから迎える快楽への序曲でしかない。 そして、瞬く間にその効果が美汐を包んだ。 「…はぁぁ…ぁ…」 美汐は短い声で喘ぐと、涎と嬉し涙を流しながら、その場に膝をつく。 「…あ…っ…」 …じょろっ…じゅわぁぁ… そして、体の力が完全に抜けたのか、そのままだらしなく小便を垂れ流しはじめた。 股間からは止めど無く黄色い液体が、湯気を立てながら床に放出される。 だが、美汐はただ気持ち良さそうにそれを眺めていた。 「…けっ、漏らしやがった」 「汚ねぇな。おい、それはテメェで始末しろよ?」 「…はい…」 美汐は未だ止まらぬ排泄に荒淫の表情を浮かべながら答える。 そして、その流れが止まり、自らの太腿が小便に染まった頃、彼女はゆっくりと床に頭を 下ろした。 前髪と顔が、生暖かい水溜りに触れる。 …じゅぷ…ずるずる… だが、美汐はそんな事は気にならないといった様子で、その汚水をゆっくりと口で吸い 上げていく。 あっという間に口は自らの小便で一杯になった。 …ごくっ… その度に美汐はそれを喉を鳴らしながら嚥下していく。 異様な光景だった。 しかし、それを美汐は違和感なく受け入れている。 恥辱も苦痛も全て快楽に変わっていた。 「…はぁ…はぁ…げふっ…」 そして、程なく自らの小便を全て飲み干すと、一滴も残さないと云わんばかりに、床に舌を 這わせている。 「完全に堕ちたな」 「あぁ。でも、こんなのは序の口だぜ」 男たちは服を脱ぐと、美汐を取り囲む。 「…あ…」 彼女はそれが何を意味するのか、すぐに察した。 そして、ゆっくりと体を起こすと、目の前に垂れ下がる男根に手を伸ばす。 薄汚れてはいたが、細くしなやかな指だった。 それが、焼けたような赤茶の物体に伸びる。 もう片方の手も同じように動いた。 それと同時に、美汐の手の平に男の血の流れが伝わる。 彼女はそれに逆らうことなく、その感触を楽しむように指を動かした。 そして、掴む事の出来ないもう一本の男根には、自らの舌を伸ばす。 唾液をしっかりとまぶし、丁寧に舐め上げた。 あっという間に、彼女を取り巻く男根はその固さを増し、浮き出た血管とともに痛いほどの 熱を放っていた。 「…う…ぅん…あったかい…」 美汐はそれを嬉しそうに感じている。 息を荒くしながら、更に浅ましく指と舌を動かした。 「へへっ、上手くなったもんだ」 美汐の前に立ちはだかり、舌での奉仕を堪能していた男は満足そうに言うと、少し美汐から 離れ、床に腰を下ろした。 そして、胡座をかくと怒張を美汐に晒し、手招きをする。 「さて…今度はマンコで楽しませてくれよ」 「…はい…」 美汐は両手でしっかりと他の男の男根を握りながら、素直に男の傍に擦り寄った。 その顔は期待に潤んでいる。 そして、ゆっくりと男の体を跨ぐと、体を密着させるように向かい合う。 乳房が男の胸に触れ、金色のピアスが揺れた。 「…ぁ…ん」 それすら、美汐の体に淫靡な快感を醸し出す。 しかし、彼女はそれ以上の快楽を求めるべく、勃起した男根の先を自らの秘部に合わせた。 そして、ゆっくりと腰を下ろしていく。 「…うぅ…。あぁ…ん」 男根は何の躊躇いもなく、美汐の体に埋まっていった。 すぐに脳を溶かすような心地よい刺激が美汐を襲う。 だが、まだまだ満足など出来なかった。 根元まで男根が突き刺さっても、妖しく腰を振り、更なる快楽を求める。 それは、餌に飢えたハイエナのようだった。 「はぁ…はぁ…き…きもち…いぃぃ…」 美汐は一心不乱に喘ぎ続ける。 いつしか握っていた男根は口元に寄せられ、男に醜態を晒しながら交互に口と舌で舐め まわしていた。 唇は涎と粘液で光っている。 乱交は延々と続いた。 「…くぅ…」 やがて、男たちは腰を突き出すと、美汐の顔に生暖かい精液をぶちまける。 一人は美汐の舌に注ぎ、もう一人は頬に吐き出した。 二人の射精は大量で、顔は余すところなく白濁液で満たされて行く。 しかし、その無惨な光景すらも美汐の自虐心をそそった。 「…はぁ…はぁぁ…」 そして、美汐は顔のあちこちから糸のように精液を垂れ流しながら、満足そうにその汁が 染み込む感覚を堪能しつつ、男の尿道にたまった汚液を吸い上げている。 もちろん、その時も腰はしっかりと動いていた。 既に何度か軽い絶頂に達しており、動きは頼りなかったが、それでも心は貪欲に快感を 求めている。 「さて、俺も出すぞ」 そして、美汐を貫いていた男も限界を迎えた。 男は小刻みに腰を揺すると、膣の中に容赦なく精液を注ぎ込む。 「…あぁ…ん…出てるぅ…ぁぁ…」 美汐も、その衝撃に腰を磨りつけると、一緒に絶頂を迎えた。 秘部からは愛液に混ざり、大量の精液が流れ出す。 もちろん、それは一人だけのものではなかった。 「……はぁはぁ…」 そして、内も外も男の汁と匂いを充満させ、美汐は糸が切れた人形のように倒れこんだ。 美汐は天井を見ていた。 依然、体は止めど無く湧き出す快感と、男たちの余韻に浸っている。 しかし、うっすらと心の底に何か引っ掛かるものを感じていた。 思い出さなければいけないもの。 だが、美汐はそれを打ち消すかのように、更なる快楽を求めた。 無意識に手が秘部に伸びる。 そこは自らの分泌液と男の汚液で濡れていた。 …くちゅ…じゅく… 美汐はその花弁を指で掬い上げる。 すぐに甘い感覚が体を襲った。 「…あぁん……」 思わず声を漏らす美汐。 目の前には男たちがいたが、恥じらいなどなかった。 「けっ、こいつオナニーはじめやがった」 「全く、とんでもねぇ淫乱だな」 男たちは口々に罵声を飛ばすが、美汐には届かない。 ただ、自らの欲望の赴くままに自慰に耽った。 だが、その時、美汐の体が突然揺れる。 「…ひぃ…」 薬が切れたのだった。 投与が繰り返される度、その反動は次第に激しいものになっていた。 全身を針で貫かれたような刺激が美汐を襲う。 「…ぐ…ぅ……がぁぁ…ぁ…」 美汐は水を欲する病人のように、床をのたうち這いまわった。 そして、必死に腕を伸ばし薬を求める。 目は焦点が合っておらず、止めど無く涙が零れていた。 「…はぅ…っ…お………お…おちゅうしゃ…し…て…ぇ…」 美汐は声を絞り出し嘆願する。 だが、男たちは顔を見合わせ黙ったままだった。 「…おねがい…おねがい…しますぅ…」 そんな男たちに、美汐は藁にもすがる思いで何度も繰り返す。 すると、一人の男がゆっくりと美汐に近寄って囁く。 「…それじゃあよ。あの女をまた使ってもいいか?」 そして、そう言うと、部屋の隅に目を向けた。 そこには美汐の心の奥に引っ掛かっていた存在が横たわっている。 真琴だった。 「……ひぃ…」 美汐は短く声を立てると体を強張らせる。 脳裏に真琴の姿が浮かんだ。 守るべき存在…。 だが、今の美汐に、自らの希望と意志を貫く強さはなかった。 必死に自己の欲望を抑えるべく意識を保とうとしたが、体がついてこない。 しかも、その体は既に答えを出していた。 そして、脳に決断を促すべく、執拗に震えと苦痛を送り込む。 …まこ…と…。 美汐は霞む視界を真琴に向けると、その姿を刻み込むように目を閉じる。 もう限界だった。 そして、心の底から彼女に謝罪すると、男の方に目を向ける。 「…は…い…。いい…です…」 美汐は涙で顔を濡らしながら、そう呟く。 自らが壊れていくのがわかった。 「それじゃあ、そうさせてもらうぜ」 男は勝ち誇った顔で美汐を見下すと、注射器を握る。 美汐は待ち切れんばかりに、震える腕を差し出した。 すぐに、細い腕に注射器の針が触れる。 …もう…戻れない… その時、微かに残る良心が彼女の頭に響いたが、その声は届く事はなかった。 第6話へ |
|