第3章 目覚めは悪くなかったよ…。 朝の冷え込みがいつもよりも厳しかったその日、名雪はベッドからゆっくりと身を起こした。 だが、全身に感覚が戻った瞬間、下腹部の気持ち悪さを感じる。 名雪のパジャマは、まるでおねしょでもしたように濡れており、その中心にはズボンを突き破り そうな勢いで怒張の山が出来ていた。 そして、更なる刺激を求め、まるで意思を持っているかのように蠢いている。 「…もうちょっと…我慢だよ…」 名雪は不気味に呟くと、ベッドから降りカーテンを開けた。 部屋に入り込む陽射しに、名雪のパジャマの染みが光る。 しかし、彼女は何事も無かったように、制服に着替える為、その汚れたパジャマを脱ぎ、足下に 投げ捨てた。 男根はパンティを押しのけ、隆々と点を突いている。 名雪は少しだけ頬を赤らめたが、それを押し殺すように制服を羽織った。 突き上げる肉の先に、制服の裏地が触れる。 「……っぅ…」 更なる快感が名雪を襲う。 だが、それでも彼女は耐えた。 ぎこちない格好で靴下を履くと、最後に白のケープで肩を包む。 しかも、立ちあがると制服の前面は山が出来たように持ちあがり、今にも端から男根が零れそう だった。 名雪はそれを包むように鞄を前に当て部屋を出る。 「………」 廊下に出る前、部屋の中を見渡した。 汚れた床やベッド、そして、パジャマ。 無惨な光景だった。 しかし、名雪はそのままドアを閉める。 …いい…よね…。 …どうせ…いくら掃除してもキリないんだから…。 少し自嘲気味な表情を浮かべると、名雪は階段を降りた。 相変わらず、股間に根を下ろした異物は激しく脈を打っていたが、湧き上がる欲望を自らの意思で 抑えつける。 楽ではなかった。 しかし、名雪はこれから迎えるであろう宴の為に、必死に我慢している。 だが、玄関に辿り着いた時、名雪は秋子と出くわす。 「…あら?…おはよう…名雪。……学校は明日からじゃなかった…?」 秋子は一瞬驚いた顔を見せた。 だが、その表情は名雪が制服に着替え、学校へ行く素振りを見せていた事ではなく、彼女が誰にも 起こされずに起きてきたからである。 しかし、今の名雪にとってはそんな事はどうでもよかった。 「おはようおかあさん。…今日から行く事にしたんだよ。香里だけじゃなくてクラスのみんなにも 顔見せたいし」 そして、適当な理由をつけると名雪は笑う。 だが、その笑顔の中に冷たい欲望がどんよりと滲み出ていた。 「そう…。じゃあ、すぐにコーヒーでも入れるわ」 秋子は再び不思議そうな顔をしたが、すぐに気を取り直すと、ただ娘を気遣いキッチンへ足を 向ける。 「うぅうん。今日は朝ご飯はいらないよ。復帰早々、遅刻ギリギリじゃ恥ずかしいから」 しかし、名雪は秋子の言葉に軽く首を振ると、靴を履きはじめた。 「…無理しちゃダメよ…」 秋子は心配そうに名雪の背中に声をかける。 「大丈夫だよ」 名雪は靴を履き立ちあがると、振り返って、笑顔でそれに応えた。 …ゴメンね、おかあさん…無理…いっぱいしちゃうかも… だが、心の中では同時に複雑な思いを呟く。 外は爽やかに晴れ渡っていた。 だが、その分、冷たい空気が肌を刺激する。 少しづつ、嫌な季節に向かっているのを感じ取れる肌の感触だった。 しかし、それとは関係無く、下腹部の熱が一層際立つ。 …我慢…我慢… 名雪は、今にも、この場で自慰に耽ってしまいたい衝動を抑えながら歩きはじめる。 行く先は決まっていた。 もちろん、そこは学校ではない。 自らの大切なものを奪い去った者がいる場所。 そして、自らを捨てた者がいる場所でもある。 …あゆちゃん…待っててね… 名雪は獲物の名前をうわ言のように呼んだ。 そこは山の麓に近い、郊外のマンションだった。 その一室が二人の部屋である。 名雪も一度だけではあるが、あゆがそこに引っ越した時、祐一と手伝いに行った事があったので、 迷う事はなかった。 マンションに入ると、ゆっくりとコンクリートの階段を昇る。 股間の疼きは既に限界に近かった。 制服や鞄は既に溢れた粘液でべっとりと濡れ、歩く度に気持ちの悪い音を醸し出している。 だが、名雪はただ目前に迫った目的地へ辿り着く事で精一杯だった。 そして、その部屋のドアが視線に入る。 ……… 名雪は震える指先でインターホーンのボタンを押した。 ピーンポーン。 機械的な乾いた音が耳に響く。 だが、部屋の中からは反応はなかった。 ピーンポーン。 名雪はもう一度、インターホンを鳴らした。 しかし、その音はただ無情に消えていく。 頭の中が真っ白になりそうだった。 「…うぅ…」 名雪は思わず、しゃがみ込んだ。 熱を帯び、激しく勃起し濡れている巨根が腹にまとわりつく。 再び自慰に溺れてしまいたい衝動が彼女の中に溢れはじめた。 「…うぅ…お…ちんちん…」 名雪は半べそを掻きながら、その感情を必死に鞄で抑えつける。 そして、自らの浅はかさを呪った。 …せめて…あの子が居るかどうかを確かめるんだった… 涙が頬を伝わる。 …うぅ…したい… …でも…こんな場所じゃ… …うぅ… だが、その思いとは裏腹に、名雪の手は無意識に鞄の下にある物体に伸びはじめていた。 しかし、その時だった。 「…え?」 名雪の頭上で短い声が聞こえる。 彼女は咄嗟に顔を上げた。 「…あ、あゆ…ちゃん…」 そう、名雪の視線の先にいたのは、ドアから恐る恐る顔を覗かせるあゆだった。 月宮あゆ。 祐一のもう一人の幼なじみ。 名雪は涙を拭いながら、再びあゆの瞳を覗き込む。 「こんにちは、あゆちゃん」 そして、笑顔で声をかけた。 「…こ、こんにちは…」 あゆも挨拶を返したものの、未だ状況が飲み込めない様子で、不思議そうに名雪を見ているだけ だった。 「…名雪さん…。ど、どうかしたの…?」 「…うぅぅん。何でもないよ…うん、何でもないんだ」 名雪は自分に言い聞かせるようにそう言うと、ゆっくりと立ちあがる。 「…うぐぅ…よくわからないよ…」 あゆは口に手を当てながら、困ったように呟いた。 「あ、ゴメンね。実は何でもないってのは私の事で、ここに来たのはあゆちゃんにお話があった からなんだよ」 「…え?そうなの…?」 名雪の自分でもよくわからない苦しい言い訳に、あゆはようやく納得したように肩の力を抜く。 「じゃあ、ちょっと待ってね…」 そして、あゆは気を取り直したように笑顔を見せると、ドアの奥に身を潜めた。 「え…?どうかしたの?」 「あ…うん。まだパジャマのままだから…」 名雪の問い掛けに、あゆは恥ずかしそうに頬を赤らめる。 だが、名雪は待てないという素振りを抑えつつも、あゆに詰め寄った。 「大丈夫だよ。女の子同士だし、恥ずかしがる事ないよ」 そして、あゆを部屋の奥へ押し込むように、名雪は玄関まで進み出る。 「うぐぅ…名雪さん…強引…」 「あ、ゴメンね…」 名雪は苦笑いを浮かべながらも、完全にドアの締まる位置まで入り込むことに成功していた。 そして、静かにドアを締めると、左手で鍵を手繰りロックする。 …カチャン 鉄製のドアに鍵がかかる鈍い音が響く。 「…え?」 その音に、あゆは驚いた。 異様な雰囲気を肌で感じたのだろう。 だが、既に遅かった。 「…うふふ…、やっと…出来るよ…」 名雪は、まるで人が変わったように妖しく笑う。 明らかに彼女の地の顔ではなかった。 「…ど、どうしたの…名雪さん?」 あゆは、声を震わせながら後ずさる。 その表情は、知人の見たことのない顔を見て強張っていた。 「ふふ…」 しかし、名雪は、あゆとの間隔を一定に保つかのように、どんどん部屋の奥へと進んで行く。 靴を脱ぐ配慮もなかった。 やがて、名雪の手から力なく鞄が床に落ちる。 「ひぃ!!」 そして、それと同時にあゆは短い悲鳴を上げた。 目の前にいる狂ったような知人と、股間に生えているおぞましい物体。 あゆは目を白黒させ、その場に倒れ込んだ。 名雪はさらにあゆに近寄ると、その怒張の根本を掴み、見せつけるように彼女の頭上に晒した。 粘液が糸を引き、あゆの目の前に垂れ下がる。 「いやぁぁ…」 「うふっ、どう?私のおちんちん…?」 「…ど、どう…って??」 あゆは、困ったような顔で名雪を見上げた。 だが、名雪はあゆの反応など気にも留めず、空いていた手であゆの髪を掴むと、自らの股間に 引き寄せた。 「うぅ…ぃあっ…」 あゆの頬に、名雪の熱を帯びた男根が突き刺さる。 彼女は必死に顔を背けようとするが、しっかりと髪を握られ、動くこともままならなかった。 しかも、予想だにしない事態に腰が抜けてしまい、名雪の責めをただ受け入れるしかなかった。 あっという間にあゆの顔を半透明の粘液が蹂躙していく。 「…はぁ…はぁ…」 そして、名雪は、あゆの肌の感触を先端に感じながら、次第にそれを唇の方向へ移動させた。 ナメクジが這ったように、粘液が糸を引く。 「えへへ…あゆちゃんのお口に入れてあげるね…」 名雪は虚ろな瞳でうわ言のように呟くと、亀頭をあゆの小さな唇に重ねた。 …じゅぷ… そして、ねじり込むように男根をあゆの口内へ押し入れる。 「ぅぐぅ……ぅげぇ…」 あゆは苦しそうに息を漏らした。 だが、抵抗する事も出来ない。 そして、名雪の巨根は容赦なくあゆの口の奥へと侵入して行った。 「ぁぁ…き…気持ちいいよぉ…」 名雪の全身を激しい快感が突きぬける。 自慰では味わう事の出来ない、蕩けるような感覚だった。 体中の神経が男根に集中しているように、名雪は悶えながら、ひたすらあゆの口に突き立て 続ける。 そして、すぐに限界は訪れた。 「ぁぁ…ぁ…」 名雪の男根は、まるで全ての欲望をぶつけるように射精をはじめる。 我慢に我慢を重ねていた分、濃さも量も半端ではなかった。 「…ごぽっ…ぉ…」 あっという間に、あゆの口は生暖かい粘液で溢れ返る。 しかし、男根に口を塞がれ吐き出す事も出来ず、容赦なくその波はあゆの喉へ流れ込んだ。 口の端からは止めど無く、唾液に混じり精液が流れ出す。 「はぁ…はぁ…。気持ちいいよ…あゆちゃん…」 名雪は最後の一滴まであゆの口に流し込むべく、腰を震わせながら、依然衰える事のない男根を 彼女の喉に押しつける。 「あ…ぁん…またイっちゃいそうだよ…」 そして、すっかり欲情した名雪は、再びあゆの口で快楽を貪るべく彼女を押し倒した。 「…げほっ…ぐぇ…」 ようやく男根が抜かれ、あゆは苦しそうに息を漏らす。 だが、まともに話せる状態ではなかった。 そんなあゆを尻目に、名雪はあゆの体を跨ぐと、青筋を立てて勃起している男根を再び彼女の口に 近づける。 あゆの瞳が恐怖に歪んだ。 だが、名雪は容赦はしなかった。 あゆの髪を両手で掴むと、強引に彼女の体を起こし、自らの男根を近寄せる。 「…い…いやぁぐ…ぅ…」 あゆはようやく言葉を絞り出したが、すぐに野太い男根に口を完全に遮断された。 そして、名雪はあゆの髪の毛を手綱のように揺すり、彼女の口で自らの怒張を扱きはじめる。 あゆの髪は、痛々しい音を立て次々と抜け落ちていった。 だが、その苦しみや痛みも涙でしか表現することが出来ない。 しかも、今の名雪には、そんな事はお構いなしだった。 「…はぁぁ…最高…」 ただ快楽に溺れ、欲望を満たす事のみが名雪を支配している。 「…また…イッちゃうよぉぉ……あゆちゃ…んぅ…」 そして、名雪は荒々しくあゆの体を揺すると絶頂への階段をひた走った。 …ぶち…ぶちっ… その瞬間、握っていた髪の毛は全て毟り取られ、あゆは無慈悲に床に放り出される。 しかも、それを追うように、名雪の鈴口からは水鉄砲のように大量の精液が吹き出した。 …びゅく…びゅる… 男根は何度も躍動し、その度にあゆの顔や髪を汚液で満たしていく。 床にも水でも零したように、無数の雫が広がった。 「ぁぁ…ぁ…」 名雪は気持ち良さそうに、うっとりと自らが汚した光景を眺めながら余韻に浸っている。 しかし、それは無惨な光景だった。 前髪が完全に毟られ、余すところなく白濁液に汚されている少女。 口はだらしなく開かれ、その端からは涎と粘液が流れ出ている。 だが名雪にとって、これまでは、ほんの序章に過ぎなかった。 「…じゃあ…次…やろうかな…」 「………」 名雪は半ば放心状態のあゆにそう声をかけると、今度は彼女のパジャマに手をかける。 そして、無造作に上着を引き裂いた。 「はぁ…はぁ…」 ただ、一刻も早く目的に達するため、邪魔な覆いを剥ぎ取っているというだけだった。 ズボンも強引に擦り下ろす。 ようやく、あゆの乳房と、ショーツが姿を見せた。 名雪は休む事なく、ショーツも脱がせはじめる。 しかし、それはたっぷりと水分を含み、なかなか、あゆの股間から離れなかった。 名雪は不思議に思い、ショーツに顔を寄せる。 すぐに原因がわかった。 「…あれぇ…あゆちゃん…。お漏らししちゃったのぉ?」 そして、名雪は妖しい表情で、おどけるように声を上げ笑う。 あゆは図星であることを示すように、微かに反応した。 「…うふふ…祐一に嫌われちゃうかもね…」 名雪は独り言のように呟く。 あゆの体が更に強張った。 だが名雪は、再び気を取り直し、彼女のショーツを膝まで引き下ろすと、ゆっくりと体を重ねる。 そして、あゆの耳もとで小さく囁いた。 「…でも…大丈夫だよ…」 「……ぇ…」 あゆは、不思議そうな瞳で名雪を見る。 しかし、次の瞬間、絶望と苦痛が彼女を襲った。 「…祐一に嫌われても、わたしが一生可愛がってあげるよ…」 名雪はそう呟くと、あゆの秘口めがけて、自らの男根を押し当てる。 …ずりゅ… 小便で濡れ光った秘部を捲れ上げるように、名雪の巨根が突き刺さった。 「…ひぎぃ…ぃぃ…」 あゆは想像を絶する感覚に目を見開き悶える。 「…うぅぁ…気持ちいいよぉ…あったかいぃ…」 一方の名雪は、奥へ奥へとあゆの中に腰を進めながら、押し寄せる快楽に溺れていた。 衝撃は口を犯した時よりも大きく、だらしなく涎を垂らしている。 そして、あゆの乳房を鷲掴みにすると、盛んに腰を突き立てはじめた。 「…ひぃぃ…い…ぃたっ…」 あゆは体をよじらせ、名雪の責めから逃れようとしたが、男根は深々と埋まっており、無駄な 足掻きに過ぎなかった。 そればかりか、その抵抗は名雪の欲情を更に刺激する。 「…うぅ…あゆちゃん…じっとしてなくちゃ…ぁ…」 名雪は、緩みきった顔であゆに語りかけると、舌を伸ばし彼女の頬を舐めた。 そして、腰を一層激しく動かし、子宮の奥を打つ。 乳房も手の跡がはっきりついてしまう程、荒々しく握られていた。 あゆの体を気持ち悪さと、異質の痛みが駆け抜ける。 もちろん、あゆは処女ではなかった。 しかし、名雪の巨根は祐一の比ではなく、その責めも常軌を逸していたからである。 「…ぁぁ…ひぃ…」 あゆは止めど無く涙を流し、名雪を受け入れ続けた。 …じゅく…じゅぽ… 秘部はすっかり抉れ、その隙間からは名雪の粘液とあゆの白く濁った愛液が混ざり合い、出入り の度に床に雫を飛ばしている。 「…あぁ…ぁ…ん」 名雪はすぐに押し寄せてくる限界を迎えるべく、さらに腰の振りを早めた。 「ぁぁ…来る…ぅ…ぅ……あぁ…」 そして、声が途切れるのと同時に、名雪の男根からは激しく白濁液が飛び散りはじめる。 それは、あゆの膣内を覆い尽くすように注がれはじめた。 「……ひぁ…ぁ…」 あゆは体の中を襲う衝撃に、目を閉じ、掠れた声で嗚咽を漏らす。 それが彼女に出来る唯一の反抗だった。 しかし、あゆの苦難はそれで終わった訳ではない。 名雪は飽きる事なく、あゆを犯しつづけた。 同じ格好で数回射精すると、今度は尻を抱え彼女を犯す。 後ろ髪を引っ張り、乳房を揉み砕き、人形のように嬲った。 膣からは精液が溢れ、太腿を伝わり床を汚す。 顔は涙と涎でぬらぬらと光っていた。 「…はぁ…ん…。また出ちゃったぁ…」 今も、名雪はあゆを後から貫きながら、何度目かわからない射精を行っている。 しかし、ようやく満足したのか、全てを出し終えると、名雪はあゆの秘部から男根を抜き、 その場に腰を下ろした。 そして、大きく肩で息をする。 制服の裾は、自らの汚液とあゆの汗ですっかり濡れていた。 だが、さほど気にする素振りも見せず、名雪は床に転がっていたあゆのパジャマで、その裾と 自らの男根を拭う。 そして、下着を履き直すと、あゆのほうを見た。 あゆは固まったように、尻を突き上げたままの格好で止まっている。 だらしなく秘部から精液を滴らせ、表情にも生気は消え失せていた。 名雪はゆっくり立ちあがると、あゆの頭の前に身を進める。 「…惨めな格好だね…」 そして、あゆを見下すと、半ば嘲笑したように呟いた。 だが、彼女は何も答えない。 名雪はさらに続けた。 「それじゃあ…わたし帰るよ。でもね…祐一には内緒だよ…。だって…明日からもあなたと楽しみ たいからね…」 「………」 それでも、あゆは何も言わなかった。 しかし、名雪はあゆが決してこの事実を口外しないと思った。 そして、沈黙が続くその家を後にする。 ドアを締めた後、部屋の中から嗚咽が漏れた気がした。 だが、気にも留めず、ゆっくりと帰路に就く。 「ただいま…」 名雪が帰宅した時、既に日は暮れかかっていた。 だが、家は不気味なほど静けさを醸し出している。 いつもなら、温かい声で自らを迎えてくれる秋子の声も今日はなかった。 …あれ、おかあさん居ないのかな? 名雪は妙な違和感を感じながら、リビングに向かった。 そして、ドアを開き、照明のスイッチを入れる。 「うわぁ…」 だが、その瞬間、名雪は思わず驚きの声を上げた。 キッチンのテーブルに一人の女性がうずくまるように、佇んでいたからである。 「…お…おかあさん…」 それは母親の秋子だった。 「…ど、どうかしたの…?」 名雪は自らの呼び声にも反応しない秋子を心配し、ぎこちない足取りではあったが傍に近寄る。 「…名雪…」 しかし、秋子はただ、そう呟くと、再び視線をテーブルに向ける。 次の言葉を押し殺しているようだった。 「…おかあさん…」 名雪は何がどうなっているのか理解出来ず、悲しい声を絞り出す。 暫しの沈黙が流れた。 だが、ようやく秋子は覚悟を決めたように、真っ直ぐな目で名雪を見ると口を開いた。 「…名雪…。あなたの部屋…どう言うことなの…?」 「………」 秋子の台詞に名雪は何も言えなかった。 そればかりか、自らの汚液にまみれた部屋を見られてしまったショックが胸を締めつける。 「………」 名雪は困惑した顔で秋子を見た。 しかし、秋子の真意は名雪が考えていたものと違っていた。 秋子はゆっくりと名雪に手を伸ばす。 「あ…」 名雪の体が温もりに包まれていく。 いつの間にか、秋子は名雪を包み込むように抱いていた。 「…お…おかあさん…」 名雪は秋子の行動がよくわからず戸惑う。 だが、すぐにその意味を察した。 「…言わなくてもいいのよ…何も…」 秋子はうっすらと涙を浮かべながら、名雪を包み込む。 「…辛かったでしょう…」 そして、優しく名雪の長い髪を撫でた。 …そうなんだ…そう思ったんだね… 名雪はまるで他人事のように、母親の対応を受け止めると、それに合わせるように少し悲しい 目を作った。 「…だ…だいじょうぶ…だよ…」 そして、小さな声で気丈に呟く。 その言葉は、秋子にさらなる胸の痛みを与えた。 怒りと悲しみ、二つの芽が秋子の中で大きく広がって行く。 「…ごめんなさい…何もしてあげられなくて…」 しかし、それを押し殺すように、秋子は優しく娘に声をかけた。 「…おかあさんが…謝ることじゃないよ…」 名雪は、母の思いを嬉しく受け止めながらも、流れを壊さぬよう静かに首を振る。 「名雪…。辛い事は一人で背負わないで…」 「…うん…」 「あの部屋のことも…」 「…そうだね…」 名雪と秋子の短い言葉のやり取りは続いた。 時計の秒針だけが響く部屋に、母の思いと、娘の思惑が交差する。 そして、名雪はしばらく黙った後、思い立ったように口を開いた。 「……やったのは…祐一……だよ…」 名雪は秋子の耳元で静かに呟く。 衝撃が部屋を流れた気がした。 そして、その流れを感じ取ったかのように、秋子の体が微かに震える。 だが、それ以上は何も反応しなかった。 ただ、名雪の体を一層強く抱きしめる。 そして、名雪も無言のまま秋子の温もりと体の感触を感じていた。 再び疼きはじめた男根を鞄で抑えつけながら。 窓から見える闇には白い粉雪が舞いはじめていた。 次へ |
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