MOUMOUBOX HOME PRODUCT BLOG NOVEL GALLERY LINK MAIL

■ささやかな願い■

 
(第10話)
 

                           

…明日は私の誕生日…

…最後のプレゼントは…自分で手に入れましたよ…







 栞はあゆと一緒に雪が舞いはじめた道を歩いていた。

 路面は轍(わだち)や人の足跡が延々と続いていたが、既に表面には砂糖でも振りかけたように
うっすらと新雪が積もっている。

 このまま止まなければ、明日の朝には何もなかったかのように全てが白く染まるだろう。

…まるで私の未来みたいですね…

 栞は道に足を取られないように、ゆっくりと一歩一歩を踏みしめながらそう思った。

 確実に逃れられない運命へと近づいている自分。

 それを裏付けるように体は少しずつ力を失っていく。

 だが、今の栞にとって、それは些細な事に過ぎなかった。

 全ては最後の目的を果たすために。


「着きました、ここです」

 歩きはじめて10分程度経っただろうか。

 栞は住宅街の一角をあゆに指し示した。

 何の変哲もない一軒家。

 そこが向かっていた場所だった。

「わぁ、ここが栞ちゃんの家なんだ」

 あゆは感銘したかのように栞の家を見上げる。

 最初こそ乗り気ではない風だったが、今は彼女の家に呼ばれた事を心底喜んでいるようだった。

「では、中へどうぞ」

 そんなあゆに栞は優しく声をかける。

「うん、じゃあお邪魔するね」

 あゆも笑顔でそれに応えた。



「では、ちょっと待ってて下さいね」

 栞はあゆを自らの部屋へと招くと一人階下に降りる。

 彼女への飲み物を用意するためだった。

 来客用のティーカップと、自らのマグカップ。

 それに冷たい牛乳を注ぐと、電子レンジにかける。

…ウィーン…

 無機質に回り続けるレンジ。

 そして、2分ほど温めると牛乳のほのかな匂いが漂いはじめた。

…これくらいかな…

 栞は火傷をしないように慎重にそれを取り出すと、カップ内の牛乳を均等な温かさにするためにかき混ぜはじめる。

 そう、電子レンジだとどうしても上と下で温度にムラが出来てしまうのだ。

 手抜きをした事をあからさまに悟らせないための最低限の心がけである。

 しかし、栞が考えているのはそれだけではなかった。

 彼女はゆっくりとカップをかき混ぜながら、空いた手で洋服のポケットに手を伸ばしている。

 そこには様々なものがしまい込まれていた。

 栞はその中から、ある錠剤の束を取り出す。

 それは、彼女自らは一度も使った事がない薬だった。

 それを1粒、かき混ぜていたカップの中へと落とす。

 そして、それが完全に溶けるまで栞はスプーンを回し続けた。

…あと…少しですよ…

…楽しみ…だな…







「お待たせしました」

 数分後、栞はトレイに二つのカップとお菓子のカゴを乗せ部屋に戻った。

 部屋は先ほど入れたストーブにより十分に暖まっている。

「栞ちゃんの部屋、とっても綺麗だね」

 その中で、あゆは律儀に正座しながら栞を出迎えた。

 だが、その顔は好奇心によって満たされており、まるで初めて他人の部屋を見るかのように目は輝いている。

「そうですか?ありがとうございます」

 そんなあゆの言葉に栞は嬉しそうに答えると、そっと床にトレイを下ろした。

 二つのカップからは牛乳が湯気を立てている。

「あ、ありがとう栞ちゃん」

「いえ、このくらい当たり前ですよ」

 小柄な二人はトレイを囲みながら穏やかに会話を交わしていた。

「それじゃあ、いただきます」

 あゆはそんなやり取りに触発されたかのように、カップに手を伸ばす。

 そして、口でそれを冷ましながら、そっと牛乳に口をつけた。

………ごくっ………

 栞はそれを表情一つ変えずに眺めている。

「…ん?…どうかしたの?栞ちゃん」

 あゆは最初の一口を嚥下した後、じっと自らを見つめている栞に気づいた。

「いえ、何でもないです」

 だが、栞はそれをはぐらかすと、自らも牛乳を飲みはじめる。

 あゆはそれを見ると、再びカップに口をつけた。

「あぁ、温かい」

「やっぱり冬は温めた牛乳に限りますよね」

「うん。そうだね。たい焼きともよく合いそうだよ」

 再び部屋には二人の楽しそうな声が響きはじめる。

 まるでいつも仲良くしている親友のように。

 しかし、すぐに異変は訪れた。

「…あ、あれ…」

 あゆは不意に自らを襲う変化に気づく。

 急に体の力が抜け、視点がぼやけはじめたのだ。

「…どうかしましたか?」

 だが、その反応に、栞は驚く素振りもなく彼女に尋ねてくる。

 あたかも既成事実であるかのように。

「…し、栞ちゃん…!?」

 あゆはその時、ようやく自らの身に危険が迫っている事に気づいた。 

…ま、まさか…祐一くんが言っていたのは…

 先ほどの異常なまでに狼狽していた彼の姿が頭を過ぎる。

 しかし、もう既にあゆにはどうする事も出来なかった。

 更に歪んでいく視界。

 そして、抜けていく力。

「………ゆ、ゆういち…くん…」

 自らに忠告してくれた大事な存在の名前を呼ぶと、彼女はそのままベッドに凭れるように力尽きた。

「あらあら、あゆさん寝てしまいましたね」

 栞は意識を失った彼女を見下ろしながら静かに呟く。

 もちろん、聞いているものは誰もいない。

「こんなところで寝ては風邪ひきますよ?」

「仕方ないですね…今、私がベッドに寝かせてあげますね」

 だが、栞はそれでも子供をあやすかのように独り言を続け、その通りあゆをベッドの上に寝かせた。

……ガチャ…

 同時に、階下から玄関のドアが開くのが聞こえてくる。

…いよいよ…ですね…

 栞はその音に、いっそう胸を高鳴らせた。







…うぅ…ぼ、ボクはどうなっちゃったの…?

 どのくらい時間が過ぎたのだろう。

 あゆは自らの体がゆっくりと覚醒していくのを感じていた。

…あ…あれ…?

…なんか…おかしいよ…

 だが、それにつれて今まで感じた事のない違和感が体を包んでいる。

「お目覚めですか」

…え?

…うぐぅぅ…

 あゆは自らを呼ぶ声に目を覚ますと、その視線の先には栞が立っていた。

「し、栞…ちゃん!?」

 だが、あゆはその姿を見て愕然とする。

 そう、栞は先ほどまでの姿とはうって変わり、その体には何も身に付けてはいなかった。

 そればかりか、手には妖しいピンク色をした棒のようなものを持っている。

 それは極太のディルドーだった。

 両側には男根を模したカリ首と、真珠のような突起が無数に付いている。

「…ひぃ!!…えぇ…ぇ!!」

 あゆはそんな彼女の驚くべき格好に身を起こそうとした。

 だが、その体は両手両足をしっかりとベッドに括り付けられており動く事は叶わない。

 そして、彼女自身も栞と同じように何一つ纏わぬ姿だった。

 ベッドの上で剥き出しになっている、まだ幼さの残る体。

「…そ、そんな…」

 余りの光景に、あゆはみるみるうちに血の気を失っていく。

 それでも、何とかこの状態から解き放たれようとしきりに手足を動かしてみたが、食い込んだロープは
ピクリともしなかった。

 そんな藻掻くあゆに、栞はゆっくりと迫ってくる。

「…うぐぅ…こ、来ないで…」

「あらあら、ずいぶん嫌われてしまってますね」

 栞は穏やかな表情でおどけて見せた。

 だが、あゆは動けないため、その距離は為す術なく縮まってしまう。

 彼女はそっとしゃがむと、自らのベッドに拘束されている少女の傍に顔を寄せた。

「や、やめて…栞ちゃん…」

 あゆは目を白黒させ、唯一動く首を振りながら、近寄ってくる栞を拒絶しようとする。

 しかし、栞はそんな動きを制すと、あゆの顔を見つめた。

「私はただあゆさんと楽しい事しようと思ってるだけなので、じっとしていて下さいね」

 栞は眉一つ動かさず、ただ優しい笑顔を作りながら、そっとディルドーの先端に舌を伸ばす。

「…た、楽しむって…??」

 だが、あゆは栞が何をしようとしているのか理解する事が出来なかった。

「すぐにわかりますよ…」

「あ、そろそろ入ってきてもいいです」

 栞はあゆの疑問を受け流すと、誰もいないドアに向かって声をかける。

 すると、すぐにそのドアはゆっくりと開いてく。

「…………え…!?」

 そして、その奥から姿を見せたのは、あゆを再び絶望の淵にたたき落とす存在だった。

「!?…ゆ、祐一くん…」

 彼女はドアの影から現れた祐一の姿に愕然とするしかなかった。

 先ほど、自らに危険を発信してくれた存在が、この危機的状況の中…自らと相反すように
目の前にいると言う事に。

 だが、祐一は彼女の驚いた顔に決して目を合わせることなく、ただ俯いているだけだった。

 その隣では香里も彼と同じような表情で、あゆの姿から目を逸らせている。 
 
「あ、実はですね。祐一さんもお姉ちゃんも私には逆らえないんですよ」

 すると、栞は二人の気持ちを代弁するかのように口を開いた。

「さっきは祐一さん…思いっきり裏切ってましたけどね。あはっ」

 まるで全ては自らの手の中と言わんばかりに。

「いつもは二人にやって貰うんですけど、今回だけは私がお相手しますからね」

「…うぅ…言ってる意味がわからないよ…」

 しかし、ここまで来てもあゆは栞の意図がわからなかった。

 だが、わからないゆえに得体の知れない恐怖がいっそう体を包んでいるのも事実だった。

「では、今お見せしますね」

 栞は優しくそう言うと、再びディルドーを舐めはじめる。

…ちゅぷ…ちゅく…

 今度は濃密な愛撫だった。

 まるでフェラチオをするように、唾液を先端に染みこませていく。

 決して上手いとは言えなかったが、とても熱がこもっていた。

「………………」

 あゆは何も言えぬままそれを見ている。

 まるで見せつけるようにディルドーをしゃぶり続ける栞。

「ちゅぱ…ちゅ…ぷ…はぁ…、そろそろいいですかね」

 そして、たっぷりと唾液を染みこませると彼女はゆっくりと立ち上がった。

 あゆの眼前に栞の股間が露わになる。

 殆ど無毛に等しい恥部。

「まずはこれを私の中に入れますね」

 栞はそう言うと、その部分に手を伸ばしていく。

 指先が薄い毛の奥から覗く割れ目に触れた。

 その指はまるでそのラインをなぞるようにゆっくりと往復を繰り返す。

 すると、そこは次第に湿り気を帯びはじめた。

 同時に肉の音が微かに響きはじめる。

…ちゅぷ…ちゅぷ…

 そして、ほどよく滑りが出てくると、今度はその割れ目の中に指を差し込みはじめた。

 すると、その指は吸い込まれるように肉の中へと入っていく。

 栞はそれを見せつけるかのように、心なしか両足を広げた。

 すると、覗いた内股はしっとりと濡れており、微かに見える秘部は完全に蜜で染まっている。

 彼女はその中心に中指と人差し指を挿し込み続けた。

 しかも、ゆっくりと出し入れしながら。

「…はぁ…ぁ…だんだん…気持ちよくなってきましたよ」

 栞は少し頬を赤らめながら、あゆを見下ろしている。

「…うぁ…ぁ…」

 あゆはその動きに、拘束されているにも関わらず驚きの声を上げた。

 彼女にとっては他人のオナニーを見る事はおろか、そのような知識すらないのだ。

「女の子はみんなそうなんですよ」

 そんなあゆに、栞はまるで先生のように語ると、二本の指をさらに秘部の奥へと埋没させる。

…ちゅぅく…

 柔らかい肉の音があゆに耳にも届いた。

 そして、その花弁の奥からは、半透明の愛液がゆっくりと指を伝いはじめる。

「はぁ…ぁ…そろそろいいかな」

 栞はその感触を確認すると、今度はそこにディルドーを近づけていく。

「…う、うそぉ…!?」

「えっへん。こんなのも入っちゃうんですよ」

 栞はそう言いながら、濡れた秘部にディルドーを押し当てはじめた。

 それは肉を抉るような音を立てながら、栞の小さな秘肉を押し広げていく。

 だが、決してその肉は裂けることなく、しっかりと膨れた先端を咥え込んでいるのだ。

 しかも、それはどんどんと奥へと入っていく。

 カリ首を完全に咥え、突起が突いた竿の部分までをも飲み込みはじめた。

 表面を覆っていた唾液は、粘着質の愛液によりしっとりと上書きされていく。

「……………………」

 あゆはその光景に言葉を失っていた。

 先ほどまでの興味は一転、そのショッキングな光景に現実へと引き戻されたのだ。

 しかも、自らも同じ事をしなければいけないという不安と恐怖が頭を掠めている。

 彼女は微かに体を震わせながら、脳裏に浮かんだ絶望をその顔に浮かべていた。

「あ、ようやくわかったみたいですね」

 栞はそんなあゆの表情を察すると、楽しそうにベッドの上に乗り上がる。

 股間からはまるで男根が生えているかのようにディルドーが天を突いていた。

 彼女はその照準をあゆの剥き出しになっている股間に合わせる。

「…や、やめて…そ…そんなの入らないよ…!!」

 あゆはようやく自らを取り戻すと、必死に叫びはじめた。

 動かないのをわかっていながらも体をばたつかせる。

「…ゆ、祐一くん!?…お願い…助けて…」

 そして、しきりに目の前に立っている無力な男の名を呼んだ。

「………………」

 しかし、祐一は沈黙を守っていた。

 視線を床に逸らし、じっと無言を貫いている。

 その隣では、香里も腕を組みながら俯いていた。

 まさに傍観者と化している二人。

「…ゆ…ゆういちくん…」

「無駄ですよあゆさん。誰も助けてくれませんから」

「…うぐぅぅ…い、いやぁ…」

「だったら、楽しむ方向で考えましょうよ。ねぇ?」

 栞はそう言いながら、悲しんでいるあゆの体を跨いだ。

 そして、ゆっくりと体を近づけていく。

 二人の小振りな乳房がそっと絡み合い、それぞれの体温がお互いに伝わりはじめる。

「…ひぃ…ぃ…」

 あゆはその初めての感触に怯えたような声を上げた。

 だが、決して避ける事は出来ず、まるで押し付けられるように栞の乳房が絡みついてくる。

「…やぁ…やだぁ…」

 あゆの声はこれから迎えるであろう恐怖に震えていた。

 栞の責めが優しければ優しいほど、その不安が助長されていく。

 だが、栞はそんな彼女の気持ちなどお構いなしに、そっとあゆの頬に唇を当てた。

「あぁ…あゆさんの肌…すべすべです」

「…いやぁ…ぁ…」

「健康そうで…羨ましいな…」

 栞は静かにその肌の感触を楽しんでいる。

 汚れのない純白の裸体。

 その沃野に彼女は唇や指、そして体全体を合わせるように動いていた。

 お互いの体は擦れ合うたびに、妖しく跳ねるとその張りと柔らかさを誇示している。

「……うぅう…ぅ…」

 だが、とてもあゆはそれを甘受する余裕はなかった。

 いつ、その股間から覗いているディルドーが自らを襲うかわからないのだ。

 それでもあゆには、ただ彼女の責めを受け入れるしか道はなかった。

「それでは、そろそろ…あゆさんとの記念に…」

 そして、あゆの肌を十分に堪能した栞は、静かにそう呟くと腰を浮かせる。

 ディルドーの先端が掬い上げるようにあゆの恥丘をさすっていく。 

「…えっ…?…ひぃぎぃ!!!」

…じゅぷ…

 程なく、あゆの股間に激しい痛みが走った。

 ディルドーの先端は数回その無毛の丘を撫でたあと、彼女の肉を抉りはじめていたのだ。

 前戯など何もなかった。

 ピンク色の物体は未踏の地に入り込むと、容赦なくそのまだ幼さが残る秘部を一気に捲り上げる。

 そして、それが肉を完全に押し広げると、その奥にある処女膜を躊躇なく突き破っていた。

「…ひぅあぁぁぁ!!い、痛いのぉ…!!」

 あゆは想像もしなかった破瓜の痛みに、体を反らせる。

 本来であればのたうち回っているところだが、完全に手足を縛られているためそれも叶わなかった。

「うわぁ…いっぱい血が出てますね」

 栞は驚いたような台詞を吐きながらも、全く遠慮する素振りも見せず、更に腰を奥へと入れていく。

「…やぁぁああ…し、栞ちゃ…ん…うあぁぁぁ…」

 あゆは目を見開き涙を流しながら叫んだ。

 だが、その声は届かないかのように栞はただあゆの秘部を求め続ける。

 そればかりか、じわじわと秘肉にディルドーを埋めながら、あゆの小振りな乳房を鷲づかみにしていた。

 完全に手の中に収まった乳房を、栞は爪を立てるように揉みはじめる。

「あはは、あゆさんも私に負けず小さいおっぱいですね」

「でも…揉めば大きくなるかもしれませんよ」

 栞は狂気じみた笑顔を浮かべながら、しきりにあゆの乳房を揉み続けた。

 それはむしろ揉むというより抓るといった方が正しいかも知れない。

 すぐに乳房の表面は、栞の手の形に痛々しい痕が付きはじめる。

「…いやぁぁぁ…あぁぁ…い、痛い…ぃぅい……」

 あゆは叫ぶのが精一杯だった。

 既に声は枯れはじめ、口からはだらしなく涎が垂れ落ちている。

 そして、下の口も鬱血でベッドのシーツを染めながら、限界までディルドーを突き込まれていた。

「あぁ…奥まで入りましたよ、あゆさん」 

 栞はそれを満足そうに見ている。

 だが、その反応とは裏腹に、腰はなおもあゆを求め動きはじめていた。

…じゅぴ…じゅぷ…

 その度に生々しい肉の音が部屋に響いていく。

 しかも、あゆはその音を自らの血によって奏でているのだ。

 それだけで苦痛を感じるような悲しいメロディだった。

「……はぁぁぁ…ああがぁ…や…めぇ…あぁ…」

 容赦なく秘部にディルドーを出し入れされながら、あゆは叫び続ける。

「はぁ…はぁ…あゆさん素敵ですよ」

 しかし、栞はただ自らに湧き起こりつつある快感を更に呼び起こすべく腰を振り続けた。

 しかも、手は乳房を鷲づかみするだけでは飽きたらず、その中央にある乳首を引っ張ったり抓ったりしている。

「……ぁぁ…も…もう…やめてぇ…」

 あゆはそれでも辛うじて意識を繋ぎ、懇願するように栞を見た。

「大丈夫です、何しろ痛いのは最初だけですから」

「……そ…そんなぁ…」

 だが、栞は至って平静を保っている。

 しかし、その後にさり気なく衝撃の言葉を口にした。

「私だって…最初はとっても痛かったですよ…」

「…祐一さんにしてもらった時は…」

「…え…!?」

 栞が挙げた男の名にあゆの目が激しく揺れる。

「…し、栞!?」

 そして、同時に祐一が沈黙を破った。

 その顔には焦りと困惑の表情が浮かんでいる。

 だが、栞は全く動じる事はなかった。

「あら?嘘…とでも言いたいんですか?祐一さん?」

 むしろ余裕の表情で祐一を見やる。

「…………………」

 すると彼は、まるで蛇に睨まれたカエルのように言葉を失い、その場に膝を落とした。

「…そ…んな…」

 あゆはその姿を見て、栞の言葉が事実である事を悟る。

「こんな私も…今ではけっこう気持ちよくなっちゃってるんですよ。だからあゆさんも今は我慢です」

「…すごいね…栞ちゃん…」

「…え?」

 だが、不意にあゆから返ってきた言葉に栞は耳を疑った。

 あゆは先ほどまでの苦悶の表情が嘘のように落ち着きを取り戻している。

 今もなお、その秘部にはしっかりとディルドーを突き刺されているというのに。

「…あゆ…さん…?」

 栞はその予想だにしなかったあゆの表情に、少しだけ戸惑いの色を浮かべた。

 それでも、その顔を再び歪ませるべく腰を動かしはじめる。

…ぐちゅ…にゅちゅ…

 歪むような肉の音が響きはじめた。

 しかし、あゆの表情は微動だにしない。

「…もう…痛くないよ…」

「…えぇ?」

 栞の責めを淡々と受け止めたまま、あゆは静かにそう呟いた。

「…まさか栞ちゃんがこんな子だったとはね」

 あゆは今まで見せた事もないような毅然とした表情で栞を見上げると言葉を続ける。

 重苦しい空気が部屋を漂いはじめていた。

「…あゆさんに何がわかるというんですか?」

 だが、栞も負けていない。

 今までの穏やかな表情がキリッと締まると、彼女の視線を正面から受け止める。 

「…私はもうすぐここからいなくなってしまうんですよ…」

「…最初は…みんな覚えていてくれるでしょう…」

「…でも…時間が経てば…誰も私の存在なんか…覚えていてはくれないんです…」

「…だからこそ…私は絶対に忘れて貰わない方法を選んだんですよ…」

 栞は全てを赤裸々に語った。

 瞳からはいつしか涙が溢れている。

「…わかったよ、栞ちゃん」

 すると、その顔を見てあゆは静かに微笑んだ。

「…えっ…?」

 だが、それを栞は素直に受け止める事が出来なかった。

 そんな得体の知れない不安を生じさせる彼女の微笑み。

「栞ちゃん…明日が誕生日なんだよね」

…え?ど、どうして知ってるの…?

 そして、それを裏付けるかのようにあゆは彼女自身が知り得ない事実を語った。

 栞の不安がいっそう増していく。

 こんな気持ちになるのはずいぶんと久しぶりだった。

 断ち切ったはずだった死への恐怖…。

 それを思い起こさせるような、あゆの言葉とその表情。

「…ボクが特別にプレゼントをあげるね」

「…栞ちゃんが…これから一生楽しく過ごせるおまじないだよ…」

「…ど、どういう事ですか…?」

「明日からも…頑張ってね…」

「そ、それって…?…う…嘘…っ…!?」

 あゆの言葉に栞は震えた。

 彼女が何を言っているのかを理解したのだ。

 終始強気だった表情はみるみるうちに怯えたものに変わり、その本当の姿を晒していく。

 そして、それを見届けるようにあゆの体が光を帯びはじめた。

 それは一瞬にして部屋全体に広がると、全てを白く染めていく。

「…いやぁ…待って!!」

 栞は闇雲にあゆの姿を探った。

 だが、ディルドーを介して繋がっていた体や、握っていたはずの乳房からも彼女の温もりは消えている。

「…そ、そんな…ぁ…」

 栞は落胆の溜息を漏らす。

 しかし、どうする事も出来ないのだ。

 先ほどのあゆがそうであったように、今の栞も無力だった。

 そして、光が消え、部屋がいつもの状態に戻った時、あゆの姿はどこにもなかった。



…さようなら…



 微かにそんな言葉が聞こえたような気がする。 

 それは栞にとって…とても重い別れの言葉だった。




 こうして一人の少女がこの世界から消える。

 ひとつのささやかな贈り物を残して…。



エピローグへ